新型コロナウイルスの感染拡大が続き、経済への影響も深刻さを増しています。
企業を取り巻く経営環境も大きく変化するなか、中小企業や中堅企業の事業転換や新分野進出を支援する「 事業再構築補助金 」の一次公募申請受付が行われました。
事前に注目を集めていた補助金だけに、一次公募では申請が殺到し、システムのサーバーがダウン。
申請の締め切りが延長される事態ともなりました。二次公募以降の申請受付はどうように行われるのか、2021年5月1日時点でわかる今後のスケジュールについて説明しましょう。
4月から受付を開始した「 事業再構築補助金 」の目的は
事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの感染拡大によって厳しい経営環境にある中小企業や中堅企業、個人事業主などを対象とした補助金です。
中小企業の事業再編や業態転換などを支援し、中小企業の成長を促すことを目的にしています
公募スケジュールの説明の前に、事業再構築補助金の概要について説明しましょう。
コロナ禍で苦しむ中小・中堅企業の事業再建を支援
事業再構築補助金は、法律で定義された中小企業のほか、資本金10億円未満の中堅企業、個人事業主が対象です。申請には次の3つの用件があります。
- 新型コロナの感染拡大以降、売り上げが減少している
申請前直近6カ月のうち、コロナ感染拡大前( 2019年1月から2020年3月まで )と比べて同月比で10%以上、合計売上高が減少している月が3カ月ある。
- 事業転換や業態変換、新分野展開を行う
国の事業再構築指針に沿って現在の事業を見直し、事業・業種や業態の転換、または新分野への事業展開を図る。
- 認定支援機関と事業計画を策定する
認定経営革新等支援機関( 認定支援機関 )と事業計画を策定する。事業計画は、一定の以上の成長を見込む具体的な内容でなくてはならない。
予算額は総額1兆1485億円
事業再構築補助金は2020年度第3次補正予算に盛り込まれ、事業予算は1兆1485億円計上されました。
補助額は企業の規模や事業計画の内容によって異なりますが、1社あたり最大1億円の補助が受けられます。採択件数は約5万5千件の予定です。
補助枠は全部で5種類 採択数に上限のある枠も
事業再構築補助金には、事業規模や事業内容に応じて5つの枠が設けられています。
会社の規模拡大を目指す中小企業や海外での事業展開を目指す中堅企業など挑戦的な事業計画を作成した企業には、より多くの補助金が交付されます。
補助枠は、中小企業向けと中堅企業向けに分かれ、それぞれに2つの枠が用意されています。
中小企業を対象にした枠は「 通常枠 」と「 卒業枠 」、中堅企業を対象とした枠は「 通常枠 」と「 グローバルV字回復枠 」となっています。
「 通常枠 」は中小企業の場合、補助率2/3で補助額は上限6000万円、中堅企業は補助率1/2( 補助額が4000万円を超えるときは1/3 )で上限8000万円です。
一方、「 卒業枠 」「 グローバルV字回復枠 」は、「 通常枠 」にさらなる用件が加わり、補助額も上限が1億円と増えます。
「 卒業枠 」は事業の再編や新たな設備投資、海外事業の展開などによって会社の規模を大きくし、中堅企業への脱皮を目指す中小企業を対象としたものです。
また、「 グローバルV字回復枠 」は、新たに海外事業を展開し、売り上げなどの大きな成長を目指す中堅企業が対象です。
卒業枠とグローバルV字回復枠の採択数には上限があり、卒業枠は400社限定、グローバルV字回復枠は100社限定となっています。それぞれの枠の補助額と補助率は次の表の通りです。
中小企業 | |||
補助金額 | 補助率 | ||
通常枠 | 100万円~6000万円 | 2/3 | |
卒業枠 | 6000万円超~1億円 | 2/3 | |
中堅企業 | |||
補助金額 | 補助率 | ||
通常枠 | 100万円~8000万円 | 1/2( 4000万円超は1/3 ) | |
グローバルV字回復枠 | 8000万円超~1億円 | 1/2 | |
さらに、企業の規模を問わず、「 緊急事態宣言特別枠 」が設けられました。
この枠は、国の緊急事態宣言に基づき、飲食店の時短営業要請によって、大幅に売り上げが落ち込むなど大きな影響を受けた事業者が対象です。
特別枠の審査は、優先して行われ、採択されると補助率や補助額が引き上げられます。
不採択となっても、加点された状態で「 通常枠 」において再審査されるため、採択される可能性が高くなります。
緊急事態宣言特別枠に採択された場合の、補助率や補助額の引き上げ幅は次の通りです。
補助額 | |||
従業員数5人以下 | 100万円~500万円 | ||
従業員数6~20人 | 100万円~1000万円 | ||
従業員数21人以上 | 100万円~1500万円 | ||
補助率 | |||
中小企業 | 3/4に引き上げ | ||
中堅企業 | 2/3に引き上げ | ||
事業再構築補助金の申請スケジュールは?
事業再構築補助金の一次公募は2021年5月7日で締め切られました。当初は4月30日までの予定でしたが、最終日に申請受付のシステムがダウンしてしまったため、7日まで延長する措置が取られました。
一次公募は5月7日で締め切り
一次公募は3月26日に公募要領が公表され、申請の受付が4月15日から始まりました。受付の締め切りは5月7日でした。
今後審査が行われ、一次公募の採択結果の公表は6月中旬の予定です。採択結果は中小企業庁「 事業再構築補助金 」のHP( https://jigyou-saikouchiku.jp/ )で公表されます。
一次公募は問い合わせや申請の殺到で混乱
事業再構築補助金は規模の大きな補助金だけに注目も高く、申請の受付開始前から事務局には多くの問い合わせが殺到したようです。
問い合わせに対応するコールセンターを急遽、土曜日にも開設するなど事務局では対応に追われました。
申請は「 GビズID 」という電子申請システムを使って行われますが、当初の締め切り予定日だった4月30日は朝からGビズIDシステムにアクセスが集中。
サーバーがダウンし、一時的にログインできない状況となりました。このため、国では応募の締め切りを1週間延長しました。
この対応について、早めに申請を終えた事業者からは「 事業計画を見直す余裕ができ、不公平ではないか 」との声も上がっていますが、審査にあたって事情が考慮されるかどうかは不明です。
二次公募の申請は5月10日頃開始の予定
2021年5月7日に申請が締め切られた後、二次公募が5月10日ごろから開始される予定です。
詳しい内容は5月10日頃の公募開始をもって公表されるとみられ、申請受付の締め切りは7月上旬の予定です。
どうなる? 今後の事業再構築補助金申請スケジュール
超大型補助金として関心の高い事業再構築補助金ですが、二次公募以降のスケジュールはどうなっているのでしょうか。今年度末に向けての見通しについて説明しましょう。
事業再構築補助金は年度内に4回の公募予定
事業再構築補助金の一次公募は5月7日で締め切られましたが、5月10日頃から二次公募が始まる予定です。国の説明では、2022年3月までに二次公募を入れて4回の公募を実施することになっています。
公募の詳細なスケジュールは、公募開始時に公表されるので、今後申請を予定している方は、中小企業庁の事業再構築補助金HPなどをこまめに確認しましょう。
今後、事業内容の見直しの可能性も?
事業再構築補助金は最大1億円の補助が受けられる超大型補助金です。一次公募でシステム障害が起きたように、多くの申請が予想されます。
一次公募に応募が殺到したのも、早く申請しなければ採択予定数に達してしまうと考えた事業者が多かったからだと考えられます。
しかし、事業再構築補助金では具体的な事業計画が求められます。
申請の支援事業を行っている事業者の中には、事業計画で求められる内容の水準が高いため、最初は採択数が増えず、今後審査のハードルが下がるのではないかと見ているところもあるようです。
また、大阪や東京など4都府県で3度目の緊急事態宣言が発出されるなど、新型コロナウイルス感染拡大の終息の道筋がいまだ見えません。
感染拡大の影響の広がりによっては、事業再構築補助金の規模拡大や事業の見直しも検討されるかもしれません。
申請をする場合は国からの情報に注意を
事業再構築補助金の目的は、新型コロナウイルスの感染拡大で、経営に大きな打撃を受けた中小企業や中堅企業の再建支援です。
感染の拡大状況や中小企業などへの影響によっては、事業者が適切な支援を受けられるようスケジュールや事業内容、申請方法などの見直しが行われる可能性があります。
申請をする際は、国からの情報に十分注意を払いましょう。
まとめ スケジュールなど最新の情報を入手し、余裕を持って申請を
事業再構築補助金の申請は、公募開始と同時に詳しいスケジュールが発表されるため、その時点で申請作業に着手しても締め切りに間に合わない可能性があります。
事業再構築補助金のHPなどを通じて情報収集に努め、余裕を持って申請しましょう。
特に電子申請のみの受付となっていますので、申請システム「 GビズID 」にアクセスするための「 gBizIDプライムアカウント 」を早めに取得しておく必要があります。
現在、アカウントの発行には3週間以上かかっている状況です。できるだけ早めに取得しておきましょう。
最新の情報を入手し適切に対応するため、申請代行を行っている経営コンサルタントなどに相談してもいいでしょう。
Her’sでは、中小企業診断士や行政書士、金融機関などと連携して事業再構築補助金の申請代行を行っています。事業計画の作成や申請手続きなど、お気軽にご相談ください。