DX

【解説】DXでビジネスに変革をもたらす|そのために必要な事とは?

経済産業省が2018年に公開した「 DXレポート 」をご存知でしょうか?

「 2025年の崖 」というキーワードで有名になったレポートですが、日本の企業はDXを促進しなければ、2025年以降に大きな経済損失を生むとされています。

DXはデジタルトランスフォーメーションの略称で、ITやデジタル技術を使い、ビジネスシーンに変革をもたらすものです。

DXを促進することで、自社のビジネスだけではなく、業界そのものにまで変革を起こすことができ、DXは今後のビジネスシーンで必須になってくるでしょう。

日本でも浸透し始めているDXですが、日本でDXを完了している企業は、わずか数%で今後の大きな課題の1つとなっています。

今回の記事では、「 DXがビジネスに変革をもたらす理由 」「 DXの基本や必要なテクノロジー 」を中心に解説していきます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の促進でビジネスシーンが変わる

dx

DXはビジネスシーンに変革をもたらすもので、今後の日本企業には必須となる内容を含んでいます。

まずは、DXについて理解を深めていきましょう。

関連記事:DXを推進する上で取り組むべき課題とポイント【ガイドライン付き】

DXの歴史

DXの歴史は古く、2004年にスウェーデンのウメオ大学教授が提唱したとされています。

当時は「 ITバブル 」と呼ばれるほどパソコンやインターネットの普及が爆発的に広がっていました。

様々なデジタル技術を活用した企業が大きな成長を見せ、業界にも新しいビジネスモデルを登場させたことから、「 デジタル技術がビジネスシーンに変革をもたらす という考えが広がり、DXとして浸透し始めました

日本でDXが促進され始めたのは最近のことなので、DX自体が新しいものだと思われがちですが、実際には十数年前から海外では取り組まれていたのです。

ITやデジタルとの違い

DXはもともとの始まりがITやデジタルといったテクノロジーを活用して始まったものなので、どうしても「 ITやデジタル技術を使えばDX 」思われていることが多くなっています。

ITやデジタルは必要不可欠なものではありますが、あくまでDXの一部であり、IT化やデジタル化をしたからDXを完了したとはなりません

ITやデジタルなどのテクノロジーの導入はDXの初期段階で、ここからDXが始まることになります。

関連記事:DXとは?IT化やデジタル化との違いを解説

日本では2018年のレポートがDX促進のきっかけに

冒頭でも紹介しましたが、2018年に経済産業省が「 DXレポート 」を公開しました。

このレポートには「 2025年の崖 」というサブタイトルがあり、簡単に説明すると、日本企業はDXを進めていかなければ2025年以降に年間で12兆円の経済損失を生む可能性があると言われています。

一度だけ12兆円の経済損失が起きるのではなく、年間で12兆円の損失になるため、どれほど大きな規模かが分かると思います。

詳しくは後ほどの項目でも解説していきますが、経済産業省によるDXの促進は「 新しいことをしましょう 」という意味だけではなく、「 既存のシステムに対する危機感 」も示す形となり日本の企業もDXに乗り出しました。

ビジネスモデルが大きく変わった2020年

2020年は新型コロナの感染拡大により、今まででは考えられないようなビジネスシーンの変化がありました。

DX促進していたか、していなかったかで企業に大きな差が生まれた年とも言えます。

新型コロナの影響で変わるしかなかった

新型コロナの感染拡大は様々なビジネスシーンに影響を及ぼしたと言えるでしょう。

生活様式も大きく変わり、マスクをつけることが当たり前で非対面など、人との接触を避けることが求められるようになりました。

企業によっては今まで通りのビジネスを続けることが難しくなり、変革が必要になりましたが、テレワークは業種によっては難しく、ITやデジタル技術を全く導入していなかった企業は苦戦を強いられたでしょう。

しかし、新型コロナによる影響は待ってはくれず、企業はビジネスモデルも働き方も変えるしかない状況に追い込まれました

DXを促進していた企業はダメージが少なかった

日本でDXを完了している企業は少ないですが、DXを促進している企業は70%を超えています。

DXは完了していなくても、ITやデジタルといったテクノロジーを導入しているため、多少のビジネスシーンの変化にはついていくことが出来ます

コロナ渦でビジネスに変革が必要になった際もDXを促進していた企業は、テレワークなどを早い段階で実施し、非対面といった新しい生活様式に変えていくことが出来ました。

関連記事:メルカリやマイクロフトなど...DXで成功した企業を紹介

DXを促進するポイント

DXは最新技術を導入するだけでは完了しません。

テクノロジーの活用は必要になってきますが、大事な部分はテクノロジーなどの最新技術を使い、どのように計画して進めていくかになります。

DXを促進していくにあたり、一番最初に必要になるポイントを解説していきます。

社内全体の意識共有

例えば、経営陣と現場の意識がずれてしまっていてはDXを上手く進めることは出来ません。

経営陣がDXを進めたくても現場が反対意見ばかりでは、強引に進めても効果は出ないでしょう。

反対に、現場がDXを進めたくても経営陣に了承をもらえなければ進めることは確実に出来ません。

DXを促進していくためには、社内全体で同じ方向を見ることが必要になります

意識を共有することが最も大切で、「 DXが必要な理由 」や「 具体的にどのような動きで進めるのか 」を明確にし、社内で意識を共有することがDX促進のためのポイントになるでしょう。

DX促進の中心になる人材の確保

DXはITやデジタルといったテクノロジーを活用して進めるため、実際に実行していく部署や人材が必要になってきます。

ITやデジタルといった部分を外部に委託して進めることも可能ですが、自社にもDXを進めるための中心になる人材がいなければ、委託先ともスムーズな意識共有が出来ずに途中で止まってしまうでしょう。

DXを促進していくためには、外部の力も必要になりますが、頼りすぎるわけではなく、自社内でも進捗などを確認できる人材の確保が必要不可欠になってきます。

現システムを見直しながら新システムへ移行

DX促進の難しい部分はシステムの導入でしょう。

今まで使ってきた既存のシステムがある場合は、一気に新システムへ移行すると、今までのデータも喪失しかねません。

既存のシステムが古くなってきている場合には、システムが複雑化し、当時の技術者がいなければ構造や原理の分からないブラックボックス化してしまっている場合もあります。

2025年の崖で提唱されいる内容はシステムのブラックボックス化による維持費の高騰、データの活用が難しいことも含まれています。

DXを促進していく上で新しいシステムは必要になりますが、既存のシステムも見直しながら進めることで、今までのデータを喪失してしまう可能性や、より使いやすいシステムを導入することが出来るでしょう

DXが上手く進まない原因

多くの日本企業が取組んでいるDXですが、ほとんどの企業では上手く進められていないのが現状です。

主な原因を解説していきます。

将来的な目標が決まっていない

DXは段階を踏んで進めて行く必要があり、ITやデジタルなどのテクノロジーを導入しても、完了するわけではありません。

「 最終的に何のためにDXを進めるのか 」が定まっていなければ、途中で方向性が分からなくなり、DXも止まってしまうでしょう。

曖昧な状態でDXをスタートさせると、ITやデジタル技術をつかって業務が効率化できたとしても、「 ビジネスに変革をもたらす 」というDXの定義にはたどり着かないことが多くなってしまいます

DXを進めるためには、企業としての目標を決めて、社内一丸となって進めていく必要があります

中途半端なデジタル化

DXは明確な方法が決まっているわけではなく、自社に合わせて作り上げていく必要があります。

業界が変われば方法も変わりますし、同じ業界でも企業によって規模や方向性が違ってくるでしょう。

そんな中で、「 ITやデジタル化をすればDX 」と考えている企業であれば、システムだけを最新式にして、社内の意識などは放っておいてしまうケースがあります。

たしかに、システムを最新式のものに変えれば、作業効率は上がりますが、使う人の意識が変わらなければ新しいものは生まれないでしょう

DXはシステムをデジタル化しただけでは、あまり意味をなさず、一番重要なポイントはDXを促進する人にあります

関連記事:DXのより具体的な課題と解決方法

DXを促進するメリット

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DXを促進する理由は企業によって様々ですが、共通しているメリットがあります。

生産性の向上

一番は生産性の向上でしょう。

DXは初期の段階でITやデジタルといった技術を導入することになるため、業務の効率化や工数の削減といった生産性の向上につながることになります

他にも、ITやデジタルといったテクノロジーを導入していくことで、人の業務を減らし、別の新しい業務を始めることも出来ます

AIやRPAを使えば、人的ミスも削減することができ、社内の人材の負担軽減だけではなく、顧客満足度にもつながるでしょう。

市場に合わせた柔軟な変化が可能に

2020年は新型コロナの影響で大きくビジネスシーンが変わりましたが、DXを進めていれば変化にも柔軟に対応できたはずです。

例えば、大きな被害を受けた飲食業では宅配サービスなど、非接触を実現する取り組みが行われました。

また、店舗によっては注文を人ではなく、タブレットを使った遠隔操作に変更するなど、DXを進めていれば市場の変化にも柔軟に対応することが出来ます。

DXを進めていなかった場合には、タブレットで注文を受けるためのシステムも1から開発する必要があるため、費用も時間もかかってしまいます。

ビジネスシーンの変化にも柔軟に対応できることがDXの大きなメリットの1つと言えるでしょう。

DXを促進しないリスク

DXは「 促進したほうが良い 」のではなく「 促進しなければいけない 」と考えるほうが良いでしょう。

先進的な技術を取り込んでいくことだけではなく、既存のシステムの老朽や、今後の市場変化に対応できないなど、DXを促進しないことには大きなリスクが伴います。

2025年の崖に対応できない

冒頭でも解説しましたが、2025年の崖は2018年に経済産業省が公開したDXレポートの中に出てきます。

このままでは2025年以降に年間12兆円の経済損失が生まれる可能性を示したものですが、要約すると、既存システムの老朽化や複雑化によりブラックボックス化してしまうことに焦点があてられています。

レガシーシステムと呼ばれる既存のシステムは、開発当時のエンジニアなどが引退してしまい、ブラックボックス化してしまいます。

そのため、多くの予算がレガシーシステムにあてられ、新しい技術に予算を投資できなくなるでしょう。

現状でも多くの企業は新しい技術ではなく、既存システムの保持に予算を割いているため、レガシーシステムのブラックボックス化が進めば進むほど、新しい技術を導入することが難しくなってしまいます

2025年の崖を回避するためにも、出来るだけ早いDXへの取り組みが必要になっています。

市場の変化に対応できない

先ほどのメリットとは反対に、市場の変化に対応できないことは大きなリスクになります。

実際に新型コロナの感染拡大により、企業の倒産数が増えました

同じ業界でもDXを進めていた企業は柔軟なビジネスモデルの変化を行うことが出来たため問題を最小限に抑えられたでしょう。
DXを促進していかなければ市場の変化についていけず、今後の事業継続も難しくなるリスクがあります

データの喪失

先ほど解説した「 ブラックボックス化 」とつながる部分になります。

既存システムのままでは、システムを保守、整備できる人材が定年や退職などでいなくなってくるため、既存のシステムを把握している人材がいなくなれば、何かあった際に保存してあるデータを取り出せなくなってしまいます

レガシーシステムをクラウド化することもなく使い続けているのであれば、データを喪失してしまう可能性は高くなってくるでしょう。

DXで重要になる「 クラウド 」に保存しておけば、データを喪失してしまう可能性も少なくなります。

DX促進に重要なテクノロジー

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ここまででDXの促進には最新のテクノロジーが必要不可欠であることが分かってもらえたと思います。

代表的なテクノロジーを紹介しますので、自社に合うテクノロジーを確認してみてください。

AI

AIは日本語で「 人工知能 」を表します。

AIは最近の技術と思われがちですが、歴史は古く、1950年代には登場していました。

しかし、一般的に根付いたのは2010年ごろからでしょう。

AIは単純なものではなく、人間の指令なしに作業を実行したり、経験から学習することで知識量を増やしていくといった特徴があります。

ここ数年では、「 スマートスピーカー 」が分かりやすい例で、人の問いかけに対して答えを探したり、経験から学習することで、より正確な答えを導き出すようになります

AIは様々な分野で活躍しているため、今後のDX促進にも欠かせないテクノロジーと言えるでしょう。

関連記事:DXとAIの関係性から具体的な事例、推進ポイントまで!

IoT

モノとインターネットをつなぐ 」のがIoTです。

従来のインターネットはコンピューター同士をつなぐものでしたが、最近ではテレビやゲーム機、スピーカーなど、コンピューター以外の様々なモノとインターネットがつながっています。

例えば、スマートウォッチは装着することで、人の心拍数や歩数など様々な情報を取得し、データを蓄積しています。

DXに重要なデータを収集することが出来るため、DXの促進には欠かせない存在になるでしょう。

関連記事:DXでIoTを活用するときのメリット

AR

ARは「 拡張現実 」を表します。

分かりやすい例では、スマートフォンのアプリでしょう。

カメラで現実世界を映し出している中にCGのキャラクターや物を映し出すことで、架空の物が現実世界に現れたような感覚になります。

主にゲームのイメージが強いARですが、最近では家具のサイズを確かめるためにも使われています。

大型の家具であれば、「 実際に家に配置すると大きすぎた 」ということがありますが、事前にARで家具を配置した状態を見ることで、買ってからの失敗が大幅に減ることになるでしょう。

DXを積極的に進めている小松製作所も建築関係のARアプリ制作を進めています。

今後、ARはゲームの世界だけではなく、様々な分野で活躍するテクノロジーになるでしょう。

VR

VRは「 仮想現実 」ですが、こちらもARと同様にゲームのイメージが強いのではないでしょうか。

専用のゴーグルを装着することで、自分がその世界に入ったかのような没入感があるため、真っ先にゲームといったエンターテイメントの業界で普及しました。

しかし、その他の分野でもVRは広がりをみせており、医療現場では世界トップレベルの医師が行う手術を体感できるようにして、若手医師のトレーニングなどにも使われています。

応用の方法が難しいように感じるVRですが、すでに医療やスポーツといった分野でも利用されていることから、今後さらに需要が高まるテクノロジーになるでしょう。

RPA

RPAは簡単に説明するとシステム上のロボットです。

AIのように高度な技術を投入しているわけではないため、学習能力がなく知識が増えることはありませんが、単純作業などの決まった行程に最適なシステムになっています。

今までは人が行なっていたような単純作業であればRPAで代用することで、作業の効率化になるため、人は別の作業に注力することが出来るでしょう。

しかし、RPAはあくまで単純作業に向いているシステムなので、想定外の処理が起きるとエラーを起こしてしまうため、エラーの際には人の力が必要になります。

AIを搭載した高度なRPAも存在していますが、RPAは基本的に単純作業を行うシステムロボットです。

クラウド

今まではソフトウェアやデータはコンピューター上など、物理的な場所に保存することが一般的でしたが、クラウドはコンピューターなどの物理的な場所ではなく、インターネット上に保存するものです。

本体に保存するとコンピューターの動きが重くなったり、データが消えてしまうといったリスクがありましたが、クラウド上に保存しておけば容量も取られず、データが消えてしまうリスクも回避することが出来ます。

また、クラウド上にデータを保存しておけば、社外にいてもデータにアクセスすることが可能になるため、自宅からのテレワークなどにも対応しやすくなるでしょう。

クラウドはDXを促進していく上でも重要なテクノロジーになってきます。

5G

2020年からサービスが開始された5Gですが、大きな特徴は「 通信速度の高速化 」「 同時接続数の増加 」「 遅延の低下 」の3つです。

通信速度の高速化と遅延の低下は同じ部分があり、例えば、4Gでダウンロードに10分かかっていたのが5Gでは1分に短縮されるほど高速になっています。

また、同時接続数は4Gの10倍になっているため、今後さらに増えるIoTの普及を加速させる形になるでしょう。

5Gは一般ユーザーのスマートフォン利用だけと思っている方も多いですが、実際には5Gに変わることで、様々な業界が進化していくことになります。

業界によってはDXの促進に重要なテクノロジーになるでしょう。

まとめ

DXはビジネスに変革をもたらすものであり、今後の日本企業では必須になってくる存在です。

DXを促進しなければ「 2025年の崖 」に対応できずに日本では大きな経済損失が生じる可能性があります。

「 促進したほうが良い 」ではなく「 促進しなければいけない 」と言えるでしょう。

しかし、DX自体がITやデジタル、テクノロジーの導入だけでは完了せず、様々な方向性があることから複雑化しています。

基本的には「 業務を効率化しビジネスに変革をもたらす 」ことがDXです。

DXは導入だけではなく、様々な技術を活用していくということを考えて進めていきましょう。