新型コロナで経営環境が悪化し、事業転換や新分野展開による事業の再構築を図る中小企業に対し最大1億円の補助を行う、国の「 事業再構築補助金 」の申請受付が4月15日から始まります。
感染拡大を防止するための外出や営業の自粛要請によって売り上げが落ち、補助金に期待を寄せている中小企業も多いことでしょう。
しかし、補助金を受け取るには審査があり、しっかりとした書類を準備して提出する必要があります。そこで、事業再構築補助金に必要な書類について説明します。
事業再構築補助金の申請で提出する書類とは
事業再構築補助金の対象となるのは、新型コロナで売り上げが大幅に落ち、事業の再編や新分野への展開で経営再建を図る中小企業です。
このため、売り上げに影響の出ていない事業者や現在の事業の規模を拡大したいという事業者は、補助の対象から外れてしまいます。
確実に補助金を受け取るには、新型コロナの影響を資料で示し、新たに取り組む事業計画の詳細な内容を説明する必要があります。
補助金の申請枠によって異なる提出書類
今回の事業再構築補助金には、5つの申請枠があります。申請枠によって、必要な書類が一部異なりますので、申請前によく確認してください。
いずれの枠も、新型コロナによる経済状況の変化に対応するのが目的ですが、特に事業を拡大し中堅企業・大企業へと成長を図る企業や海外展開を計画する企業に対する支援が手厚くなっています。
こうした枠の利用を検討している場合は、用件を満たすことを証明する資料が別に必要になります。
補助金の申請枠は5種類
通常、申請者は中小企業か中堅企業の通常枠に申請しますが、用件を満たせば補助額の大きい枠での申請が可能です。
こうした特別枠での審査は用件が厳しくなりますが、もし不採択となっても、通常枠で再審査されます。
それぞれの申請枠の主な内容は以下の通りです。
- 中小企業者等通常枠
中小企業や小規模事業者、個人事業主が対象です。中小企業の範囲については、業種ごとに資本金や従業員数によって決められています。
( 参照 : 経済産業省「 事業再構築補助金公募要領 」 )
これら中小企業・小規模事業者・個人事業主に対する「 通常枠 」では補助率2/3、補助額100万円~6000万円の補助が交付されます。
2. 中堅企業等通常枠
中堅企業とは資本金10億円未満で、中小企業に該当しない企業を指します。
補助金額は100万円~8000万円。補助率は1/2です。ただし、補助対象経費が8000万円を超えると補助率は1/3となります。
3. 卒業枠
事業の再編や設備投資、海外展開などに取り組みを通して資本金や従業員を増やし、3年~5年以内に中堅企業や大企業への成長を目指す中小企業が対象です。
補助率は2/3で補助金額は6000万円超から1億円。卒業枠で申請したものの不採択となった場合、通常枠での再審査となります。
4. グローバルV字回復枠
国際的な事業展開によって、コロナウイルス感染症の拡大の影響で大きく落ち込んだ売り上げなどのV字回復を目指す中堅企業が対象です。
補助率は1/2で補助金額は8000万円超~1億円。グローバルV字回復枠で申請したものの不採択となった場合、通常枠での再審査となります。
5. 緊急事態宣言特別枠
国の緊急事態宣言に基づく飲食店の時短営業や外出・移動の自粛要請などによって大幅に売り上げが減少した事業者が対象。
補助率は中小企業3/4、中堅企業が2/3で、補助総額は従業員数によって異なります。
補助総額は次の通りです。
【 従業員5人以下 】100万円~500万円
【 同6~20 人 】100万円~1000万円
【 同21人以上 】100万円~1500万円
補助金枠共通で必要な書類は5つ
事業再構築補助金の交付を受けるには、現在の経営状況や今後の事業計画について説明する書類を提出し、審査を受ける必要があります。
具体的にどのような書類が必要なのか説明しましょう。ちなみに申請は電子申請のみとなっていますので、書類はPDF形式に変換して添付することになっています。
事業計画書
「 事業再構築 」に対する補助金ですから、まず重要なのは今後の事業計画です。
形式は自由ですが、Wordなどの文書作成ソフトで作成し、PDF 形式に変換してから、申請時に添付します。分量はできるだけ15ページ以内にまとめてください。
事業計画では、現実的で成長が見込めるプランの具体的な内容が求められます。必ず認定経営革新等支援機関( 認定支援機関 )の助言や指導を受けて作成してください。
( 内部リンク:認定支援機関 )
認定支援機関の確認書
事業再構築補助金では、認定経営革新等支援機関( 認定支援機関 )と事業計画を策定し、一体となって事業の再構築を進めることが交付の条件の1つとなっています。
認定支援機関とは金融機関や経営コンサルタントなど、国に認定された中小企業のアドバイザーです。
近くにある認定支援機関がわからないときは、中小企業庁のホームページの「 認定経営革新等支援機関検索システム 」から近くの認定支援機関を探すことができます。
認定支援機関からの助言や支援を受けたことを確認する電子ファイルを、電子申請システムに添付します。
補助金額3000万円を超える場合は、金融機関と認定支援機関の支援が必要になりますので、確認書は2通必要になります。ただし、金融機関が認定支援機関を兼ねている場合は1通で構いません。
売上高減少を裏付ける書類
事業再構築補助金の対象となるのは、新型コロナ拡大の影響で売り上げが落ちた事業者です。このため、売上高の減少を具体的に証明する資料を提出しなければなりません。
具体的には、申請前の直近6カ月間のうち、任意の3カ月の売上高の合計と、新型コロナの影響が出る前の3カ月の売上高を比較した資料を提出します。
売り上げ月はいつでもよく、連続している必要もありませんが、売上高の合計は事業や店舗ごとではなく、企業単位での合計でなくてはなりません。
直近2年の決算書
経営状況などを確認するため、直近2年間の貸借対照表や損益計算書などの決算書を提出します。2年分の提出ができない場合は、1期分の決算書で構いません。
また、決算書を添付できない中小企業や個人事業主らは事業計画書と収支予算書を提出します。
事業財務情報
事業再構築補助金の申請には経済産業省が開設している「 中小企業向け補助金 総合支援サイト ミラサポ plus 」に会員登録する必要があります。
登録後、「 電子申請サポート 」から「 事業財務情報 」を作成し、 PDF化して申請時に添付します。
詳しいやり方が分からない場合は、ミラサポplusに財務情報の作成方法を解説した動画( https://www.youtube.com/watch?v=yYv9bSLu8W4 )がありますので、参照してください。
特定の枠でのみ必要な書類とは
通常枠の申請では、5種類の申請書類が必要ですが、通常枠以外での申請を行う場合は、追加の資料が必要になります。
申請する枠を検討する際は必要な書類についてもよく確認しましょう。
グローバルV字回復枠で必要な書類
グローバルV字回復枠は、国際的な事業展開で事業の再構築を図る事業者を対象としています。このため、具体的な海外事業の内容が分かる資料を提出します。
以下の表は事業展開別に必要な書類をまとめたものです。
事業展開 | 必要な書類 |
海外への直接投資 | 海外にある子会社などの事業概要・財務内容・株主の構成が分かる資料 |
海外市場の開拓 | 海外市場で事業展開したときの具体的な想定顧客が分かる資料 |
海外事業者との共同事業 | 共同研究契約書や業務提携契約書など海外事業者との事業内容が分かる資料。検討中の案でもよい。 |
インバウンド市場の開拓 | インバウンド市場で事業展開したときの具体的な想定顧客が分かる資料 |
書類の様式は自由で、ページ数の制限もありませんが、Wordなどの文書作成ソフトを使って日本語で作成し、外国語の文章には日本語訳をつけます。
緊急事態宣言特別枠で必要な書類
緊急事態宣言特別枠に申請する場合は、従業員数を示す書類として、労働者名簿の写しを提出しなければなりません。
もちろん、国の緊急事態宣言による時短営業や不要不急の外出・移動の自粛の影響で売り上げが落ちたことを証明する書類も必要です。
2021年1月~3 月のいずれかの月の売上高が対前年、もしくは対前々年の同月比で 30%以上減少していることを証明する決算書類や売り上げ台帳などを提出します。
また、緊急事態宣言によって影響を受けたことの誓約書も必要です。
このほか、2021年1月~3月のいずれかの月の固定費( 家賃や人件費、光熱費など固定経費の合計 )が、同期間に受給した協力金の額を上回った場合は、これらを証明する書類を任意で提出できます。
加点希望の際に必要な書類
国が発出した緊急事態宣言に基づく飲食店の時短営業要請や不要不急の外出・移動の自粛などによって、経営が大きな打撃を受けた場合、審査において加点を受けられます。
加点が受けられるケースには2通りあり、1つ目は2021年1月~3月のいずれかの月の売上高が対前年もしくは対前々年の同月比で30%以上減少している場合。
もう1つは、2021年1月~3月のいずれかの月で、家賃と人件費・光熱費などの固定費の支出が、受給した協力金の額を上回った場合です。
決算書類や売り上げ台帳、固定費の領収書などの書類のほか、緊急事態宣言で売り上げが減ったことの誓約書などを提出します。
緊急事態宣言特別枠に応募するときは、重複するため必要ありません。
必要な書類まとめ
補助金の審査は申請者が提出した書類に基づいて行われます。このため、説得力のある事業計画書と、正しい内容の証明書類を不備なく提出することが大切です。
第1回の申請は4月15日から受付を開始し、30日締め切りの予定です。中には準備が遅れたため、書類などの用意が間に合わない事業者もいるかもしれません。
しかし、事業再構築補助金の受付は、今後4回程度行われる予定です。今回は間に合わなくても、次回の公募受付に向けてしっかり準備をしましょう。