新型コロナウイルスの感染拡大により、日本の中小企業は大きなダメージを受けています。
政府は対応策として、令和2年の第三次補正予算で「 事業再構築補助金 」を閣議決定する予定です。
持続化給付金の後継施策になると見られていますが、用途が限られている点などからも採択率は低くなる可能性が高いでしょう。
まだ正式に決定されておらず、開始されるのは先になるため不明確な部分が多い「 事業再構築補助金 」ですが、現時点で判明している内容と、採択率の予想を合わせて解説していきます。
事業再構築補助金とは
新型コロナの影響で売り上げが減少し、従来通りの業務形態が難しくなったり、新規事業への参入が必要になった中小企業へ向けた補助制度となる予定です。
持続化給付金の後継とみられる
現在、実施されている持続化給付金の申請は令和3年1月15日までとなっています。
事業再構築補助金は持続化給付金が終了してから3ヶ月ほど後には申請が始まる予想なので、持続化給付金の後継になると見られています。
しかし、補助金額の上限が大幅に増えることや、申請対象となる項目が持続化給付金よりも増えるため、審査は厳しくなることが予想されるでしょう。
補助制度としては新型コロナの影響を受ける前から始まっている「 小規模事業者持続補助金 」に近く、採択率も持続化給付金よりも小規模事業者補助金に近いと考えられます。
事業再構築補助金の採択率は?
気になる採択率ですが、現時点では事業再構築補助金が始まっていないため不明です。
しかし、持続化給付金の後継になることや小規模事業者持続補助金( コロナ型 )からある程度の採択率予想が出来そうです。
持続化給付金と小規模事業者持続補助金は別物
持続化給付金の後継となることで期待されている事業再構築補助金ですが、実際には小規模事業者持続補助金に近いでしょう。
持続化給付金は新型コロナで売り上げが前年比50%まで落ちた企業や個人事業主が対象となっていましたが、小規模事業者持続補助金では売り上げの減少ではなく、今後、事業を伸ばしていくために必要な費用の一部を補助する制度です。
今回の事業再構築補助金も、新型コロナの影響で従来通りの業務形態では難しくなった企業の業務転換や、自社の技術を活かして現在、需要の高まっている医療分野などへの新規参入をする企業に向けた補助金となっています。
そのため、採択率としては小規模事業者持続補助金を参考にするほうが良いでしょう。
小規模事業者持続化補助金(コロナ型)から見る採択率
応募者数 | 採択者数 | 採択率 | |
第1回 | 6,744 | 5,303 | 81.5% |
第2回 | 24,380 | 19,833 | 81.3% |
第3回 | 37,302 | 12,664 | 33.95% |
小規模事業者持続補助金は新型コロナにより新設されたものではなく、もともと「 一般型 」として補助が行われていました。
新型コロナの影響を受けた事業者向けに「 コロナ型 」として申請概要などが変更され募集されました。
表を見ていただくと採択率は第3回が大きく下がっているのがよく分かるでしょう。
これは、新型コロナの影響を受けている事業者が多いため応募者数自体が多かったこと、本来は一般型で申し込むべき事業者がコロナ型で無理やり申し込んだため、却下されてしまった可能性があります。
コロナ型は一般型に比べて補助金額が多く、申請内容も一般型とは違っていたため、一般型で申し込めなかった事業者がコロナ型に申し込んでいたことで採択率が下がっているのかもしれません。
しかし、実際に新型コロナの影響を受けている中小企業は多く、事業再構築補助金も申請者は多いと予想できるため、採択率は低くなる可能性があります。
補助金額と補助率
事業再構築補助金の金額と補助率は大まかに予想されています。
現時点で確定ではありませんが、近い金額と補助率になるでしょう。
最大1億円( 条件による )
最大1億円との報道が出ていますが、あくまで要件を満たした中小企業のみで、実際には6,000万円が最大となる可能性が高いでしょう。
中小企業基本法で定められている中小企業の規模を超える場合には最大1億円の補助となる予定です。
一般的には最大6,000万円ですが、あくまで最大6,000万円なので、事業計画書や導入する設備次第で大きく変化する内容になります。
補助率は2/3
基本的な補助率は2/3になると考えられます。
これは先ほど紹介した「 小規模事業者持続補助金 」から見られるもので、一般型の時は2/3、コロナ型では3/4の補助率でした。
今回も新型コロナの影響を受けた中小企業が対象になる予定なので、3/4の補助率となる可能性もありますが、基本的には2/3、条件などを満たした場合に3/4になる可能性が高いでしょう。
採択の対象となる中小企業は?
事業再構築補助金は持続化給付金の後継と見られていますが、今回は売り上げの減少だけではなく、あくまで設備投資などが必要になる施策です。
あくまで新型コロナの影響で事業の継続が難しくなった企業
持続化給付金のように売り上げの減少だけではなく、今まで行ってきた事業の継続が難しくなった中小企業が対象になります。
業務転換
例えば、飲食業の場合は緊急事態宣言の発令や時短営業などで、今まで通りの運営方法では継続が難しくなってしまいました。
飲食店での食事を控える人が多くなったため、宅配やテイクアウトが必要になりましたが、宅配には移動手段が必要になり、テイクアウトでも使い捨ての容器が必要など、業務や設備投資で今までにはなかった支出が増えることが多くなりました。
他にも、実店舗での営業が難しくなり、宅配専門に業務形態を変更する場合など、新型コロナの影響を受けて
「 業務転換 」する企業が対象となるでしょう。
新規事業展開
もう1つが「 新規事業展開 」です。
製造業で医療分野など、現在の需要が高まっている分野へ新規参入する場合の設備投資費用が補助にあたる予定です。
製造業であれば新しく製造する製品のために機材を導入する必要もあるため、事業再構築補助金が適用されるでしょう。
事業再構築補助金の使途は限られている
事業再構築補助金は事業計画書の提出が必要になることが予想されるため、補助金の使途もしっかりと確認されることが予想されます。
あくまで、補助金の使途は自由ではなく、「 業務転換 」「 新規事業展開 」の必要があり、事業計画書で提出した内容にのみ適用されることになるでしょう。
補助金の制度は申請が下りた後にも定期的に国への報告が必要になるはずです。
最初に提出した内容と違う補助金の使い方になっていた場合には、返還を要求される可能性が高いため、補助金の使途は自由ではなく、「 業務転換 」「 新規事業展開 」に沿った使い方が必要にになります。
まとめ
新型コロナの感染拡大で業務転換や新規事業への参入を余儀なくされた中小企業は多いため、事業再構築補助金は今後の中小企業にとっても大きな施策となるでしょう。
しかし、小規模事業者持続補助金( コロナ型 )の採択率が下がっていることから、事業再構築補助金の採択率も低くなる可能性があります。
事業再構築補助金では最大の補助金額が1億円と、かなり高い金額に設定されているため、大きな設備投資で補助金額も最大に近い申請をするのであれば、計画書次第では補助が難しい場面も出てきそうです。
まだ、正式に開始が決まっているわけではないため、現時点では不明確な情報も多くなっていますが、令和3年2月頃からは情報もはっきりとしてくるでしょう。
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