事業再構築補助金ではマンションやアパートなど、不動産の購入は対象にならないとされています。
事業再構築補助金は新型コロナの影響で売り上げが減少した事業主を対象としているため、不動産業も関係はありますがマンションやアパートの購入は除外されることになるでしょう。
今回の記事では
- 事業再構築補助金は不動産を対象としない
- 対象になる不動産関連の内容はあるのか
という2つの点に絞って解説していきます。
事業再構築補助金の対象とならない不動産
不動産に関わるものが全て対象にならないということではありませんが、事業再構築補助金では不動産は基本的に対象にはなりません。
特に対象外とされている2つの項目を確認していきましょう。
マンション・アパートの購入
単純にマンションやアパートを購入して賃貸とする場合には事業再構築補助金の対象外となります。
もともと不動産業を営んでいる場合や、別事業から新規にマンションやアパートを購入することも事業の再構築としては認められず対象外となるようです。
実質的に不労所得に近く、労働を伴わないマンションやアパートの購入は個人でも可能となり、あくまで新型コロナの影響を緩和するための事業再構築補助金とは関係がないからでしょう。
また、事業再構築補助金と似ている「 ものづくり補助金 」でも「 労働を伴わない事業 」は対象外とされていました。
今回の補助金でも採択される可能性はないため、申請する意味はないと考えられます。
土地の購入
土地の購入も同様です。事業再構築補助金の項目内に建物費という項目がありますが、土地を購入する場合にも新たな施設を建設するのであれば建物費ということになるでしょう。
新しい施設を建設するために土地を購入しても土地代は補助の対象にはならず、あくまで建物などが対象になるということです。
事業再構築補助金は汎用性の高いものは対象にならないため、土地だけといった他の事業にも使える可能性のあるものは対象外ということになります。
不動産が事業再構築補助金の対象とならない理由
続いて、不動産が事業再構築補助金の対象とならない理由を解説していきます。
「 なぜ対象にならないのか? 」という部分を詳しく見ていきましょう。
事業の再構築ではない
まず最初に「 事業の再構築ではない 」という部分が分かりやすいでしょう。
事業再構築補助金は新型コロナの影響で事業の売り上げが減少してしまった事業者向けの補助金です。
例えば、飲食店が緊急事態宣言や時短営業で売り上げが減少してしまい、テイクアウトやデリバリーといった事業転換を行う必要がある場合には事業の再構築ということになります。
他にも従来の事業とは関係のない事業に参入する場合にも公募要領を満たせば申請は可能でしょう。
しかし、不動産の中でもマンションの購入などは今回の事業再構築補助金では再構築とは認められていません。
事業再構築補助金で重要視されているのは「 労働を伴うかどうか 」です。申請に必要な事業計画書の中には補助事業終了後の付加価値額の向上を含める必要があります。
付加価値額とは「 営業利益・人件費・減価償却費 」の3つを合わせたものになるため、マンションを購入する場合は人件費に焦点をあてて考えてみましょう。
マンションやアパート経営でも人件費は必要になりますが、他の事業と比べると少なくなります。
マンションの経営では実質的に労働を伴わないと考えられるため、不動産は事業再構築補助金の対象外とされています。
公募要領内での不採択項目に該当する
経済産業省が発表している事業再構築補助金の公募要領内に、不採択や交付取り消しとなる内容が記載されています。
建築又は購入した施設・設備を自ら占有し、事業の用に供することなく、特定の第三者に長期間賃貸させるような事業
「 特定の第三者に超期間賃貸させるような事業 」という部分がマンションやアパートの不動産経営にあたるため、不動産が事業再構築補助金の対象外になることは明確です。
申請すること自体は可能ですが、事業計画書の作成などにも時間がかかることから、無駄な業務を増やしてしまうだけです。
不動産が事業再構築補助金の対象になる場合
基本的に不動産は事業再構築補助金の対象外となってしまいますが、もともと不動産業を営んでいる事業者が事業再構築補助金に申請できないわけではありません。
不動産の中でも事業再構築が可能な枠があるため参考にしてみてください。
マンションの一部をビジネス向けに改装
不動産であるマンションやアパートを新規で購入する場合には対象となりませんが、すでに所有しているマンションやアパートを改装する場合には対象となります。
例えば、新型コロナの影響で入居者が減ってしまったマンションの一部を需要の高めっているテレワークスペースやレンタルオフィスへ改装する場合には対象となるでしょう。
ビジネス向けに改装することで必要となるオフィス機器の導入にも事業再構築補助金を利用することができます。
従来の用途とは異なり、改装や設備の導入が必要な事業となり、コロナ禍での需要も期待できるため採択の可能性も高くなると考えられます。
不動産業以外の事業を行う
事業再構築補助金は事業の再構築を促進させるためのものなので、不動産以外に目を向けて見ても良いかもしれません。
新型コロナの影響で伸びている事業に新規参入するのであれば、事業の再構築として認められるでしょう。
ただし、飲食業といった新型コロナの影響を大きく受けている事業の場合は、参入しても付加価値額の向上が望めないため、不採択になる可能性が高くなります。
あくまで、需要が見込める事業であることが大前提です。
不動産業を継続して事業再構築補助金の採択を受けるための条件
先の項目で解説した「 マンションの一部をビジネス向けに改装する 」という部分も事業再構築補助金に申請する際には条件があります。
製品等の新規性要件
まずは、製品等の新規性要件です。
事業再構築補助金には事業計画書の提出が必須になっていますが、計画書の中で次の項目を満たしている必要があります。
満たしていない場合には確実に不採択となるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。マンションの一部を改装する前提で解説していきます。
①過去に製造等した実績がないこと
製造となっていますが、テレワークスペース、レンタルオフィスに置き換えて考えていきます。
テレワークスペースやレンタルオフィスといった事業を過去に行なっていなければ要件を満たすことになります。
反対にどちらかの事業を過去に行なっていたことがあれば要件を満たさないため、事業再構築補助金には申請できないと考えてください。
②製造等に用いる主要な設備を変更すること
製造や主要な設備は、マンションの一部を改装することで主要設備を変更するということです。テレワークやレンタルオフィスに必要な機器を導入することで確実に要件を満たせるでしょう。
反対にマンションの一室を改装することなく、テレワークスペースとして貸し出す場合には要件を満たしません。そのまま使い回すのではなく、必要な設備を整えることで事業の再構築ということになります。
③定量的に性能又は効能が異なること
「 定量的に性能又は性能が異なること 」とありますが、主には製造業などに向けた内容となっています。
事業の再構築になるため、従来製造していた製品と新しく製造する製品に明らかな違いがなければいけないということになります。
マンションの改装に置き換えると、一般の方向けの賃貸とテレワークスペースやレンタルオフィスを比較することになるでしょう。
しかし、従来の賃貸とテレワークスペース、レンタルオフィスは事業の形態が違うため比較することは難しくなります。
今回の場合は「 事業が異なるため比較が難しい 」という内容を事業計画書内で示すことで要件を満たすことができます。
市場の新規性要件
続いて、市場の新規性要件です。そこで、既存事業と新規事業を比較します。
①既存製品等と新製品等の代替性が低いこと
既存製品と新製品の代替性は、新しく始める事業が既存事業の需要を奪わないかどうかということになります。
例えば、レンタルオフィスを始めることで、従来のマンション経営の売り上げが減少するのであれば不採択となる可能性が高くなってしまいます。
しかし、実際にはマンションとテレワークスペースやレンタルオフィスの経営は別物にならないため、需要を奪い合うことはないと考えられるでしょう。
売上高10%要件
売上高10%要件というのは補助事業終了後に売上高を10%以上向上させるというシンプルなものです。
①補助期間終了後に売上高10%以上の向上
事業再構築補助金は3年間を補助事業期間としていますが、この期間中に売上高を10%以上向上させる必要があります。
つまり、テレワークスペースやレンタルオフィス事業の売上高が10%以上向上する事業計画書を作成することで要件を満たすことになります。
計画書の段階で10%以上の向上を見込んでいない場合には不採択となるため注意しましょう。
事業再構築補助金の申請はいつから?
事業再構築補助金の公募は3月26日、申請は4月15日から始まっています。
具体的な公募スケジュールと合わせて確認していきましょう。
申請期限と締め切り日
事業再構築補助金の公募は1回ではなく複数回実施される予定となっています。1回目の公募はすでに始まっており、締め切りは4月30日の18時です。
すでに決定している内容であり、締め切り時間を過ぎた場合には申請することはできません。ただ、公募は1回目を除いて、あと4回実施予定となっています。
ただし、あくまで公募は予定となっているため、申請を考えているのであれば2回目の公募に間に合うように準備するほうが良いでしょう。
2回目の公募は5月から始まる予定となっています。
第一次公募スケジュール
2021年4月30日(金)18時申請受付終了
2021年6月 採択結果公表
2021年7月 交付決定
1回目の公募スケジュール予定は上記の通りです。交付が決定してから1年以内に事業に関わる支払いを済ませなければ、補助金の交付が取り消されるため注意が必要です。
補助金の交付は決定してから約1年後となるため、事業に関わる支払いは自己資金や借入での前払いとなることも念頭においておきましょう。
小規模事業者・個人事業主でも申請可能
事業再構築補助金は中小企業、中堅企業を対象としていることが発表されているため、小規模事業者や個人事業主は対象外と考えている事業者が多いかもしれません。
しかし、実際には小規模事業者と個人事業主も事業再構築補助金の対象となっています。中小企業庁が公表している「 中小企業法の定義 」の中には小規模事業者と個人事業主も中小企業に含まれています。
また、経済産業省が公表している「 事業再構築補助金に関するよくある問い合わせ 」にも小規模事業者や個人事業主も対象となると示されているため申請することに問題はないでしょう。
ただし、事業再構築補助金の採択を受けるためには優れた事業計画書を作成する必要があるため、組織力がある中堅企業などよりは採択の確立が下がるかもしれません。
小規模事業者や個人事業主は「 緊急事態宣言特別枠 」が一番、採択されやすいと考えられますので、こちらの記事を参考にしてみてください。
関連記事:事業再構築補助金は個人事業主・フリーランスも申請可能|採択されやすい枠も紹介します
まとめ
今回は「 事業再構築補助金は不動産を対象としない 」「 対象になる不動産関連はあるのか 」を中心に解説していきました。
結論としては、不動産となるマンションやアパートを購入することは事業再構築補助金の対象とはなりません。
事業再構築補助金は事業の再構築や労働を伴う事業を主としているため、マンションやアパートといった労働を伴わないとされる事業に関しては対象外とされています。
これらは経済産業省が公式で対象としないことを発表しているため、申請しても不採択か交付取り消しとなるでしょう。
現在、不動産業を営んでいる場合には、マンションやアパートの一室をテレワークスペースやレンタルオフィスに改装することで事業再構築補助金の要件を満たすことができます。
もし、不動産以外の業種に新規参入する場合には、新型コロナの影響で需要が伸びている事業に参入することで採択が受けやすくなります。
すでに1回目の公募と申請が始まっていますが、あと4回は公募が予定されているため、焦って申請するのではなく、しっかりとした事業計画書を作成することで採択の可能性を上げていきましょう。