今回の記事では「 事業再構築補助金における建物費 」を中心に解説していきます。最後まで読むことで「 自社の申請したい内容が建物費なのか 」「 どういった内容が建設費にあたるのか 」が分かる内容になっています。
建物費が主要の補助金対象
事業再構築補助金の主な補助の対象として建物費があげられます。建物費の中でも補助の対象になるものとならないものがあるため、詳しく解説していきます。
補助対象となる建物費
最初に補助の対象となる建物費ですが、経済産業省が発表しているのは主に3つです。
①建物の建築
②建物の改修
③建物撤去費
この3つですが、「 ①建物の建築 」に関しては新しく建物を建築する場合になります。例えば、製造業の場合であれば新しい生産を始めるために工場を新設する場合などが補助対象になるでしょう。
「 ②建物の改修 」は主に飲食関係が利用することが多くなりそうです。時短営業や外出自粛で実店舗での営業が困難になった飲食店がデリバリーやテイクアウトを中心の業務形態に変更させる場合などです。
今までの実店舗営業を完全に辞める場合には、店舗の一部を改修して、デリバリーなどに向いた構造に変更することが出来るでしょう。
「 ③建物撤去費 」は飲食関係、小売店などが主要の対象になると見込まれます。
例えば、小売店が外出自粛の影響を受けて客足が減っているのであれば実店舗での販売を辞め、オンライン販売などに切り替えることが考えられます。
実店舗としての機能は必要なくなるため、店舗を撤去し、新たに倉庫などで運営を開始することが出来るでしょう。このように店舗、工場の建築や業務形態を変更するために必要な費用を事業再構築補助金で補うことが出来ます。
建物費でも不動産は補助対象外
経済産業省が公開している公式のページ内で補助対象外の経費としている1つが「 不動産 」です。一見すると建物費に近く考えてしまうかもしれませんが、完全に別の経費として指定されています。
ただし、不動産については詳しく説明されていません。一般的に言われる不動産は「 土地・定着物 」とされています。
事業再構築補助金はあくまで事業の再構築を行うための補助金になるため、土地を新たに購入することには使えないと考えるのが妥当でしょう。
例えば、すでに所有している土地に新たな設備を建てることは可能でも、新しく土地を購入することに補助金は利用できない可能性が高いです。
事業再構築補助金の建物費は、あくまで、既存の建物を改修するか、すでに持っている土地の一部に新たな倉庫や建設する場合に利用するものと考えたほうが良さそうです。
ただし、実際に公募が始まれば詳細や、補助金が採択された実例が出てくるので、不動産のどの範囲まで事業再構築補助金の対象になるのかは鮮明になってくるでしょう。
建物費補助金活用例・使用例
実際に事業再構築補助金の建物費はどのような活用例があるのかを紹介していきます。主に、3つの業種に分類していますが、自社に沿った内容がない場合には補助金の申請代行会社や顧問の税理士などへ相談してみてください。
【飲食店・小売店】店舗の縮小・改修
飲食店と小売店の場合に多いのが店舗の縮小と改修です。飲食店の場合には実店舗での営業が難しくなった場合に実店舗での営業を縮小し、デリバリーやテイクアウトに重点を置いた店舗に改修することが出来ます。
また、実店舗での営業を辞めて、完全にデリバリーやテイクアウトに向いた店舗に改修することも可能でしょう。小売店の場合ですが、主に業務転換が考えられます。
新型コロナの影響で実店舗での集客が難しくなった場合にオンラインに移行する方法を取ったとします。
実店舗を完全に倉庫や出荷場所に変更する場合の店舗縮小費用が事業再構築補助金の建物費にあたるでしょう。また、飲食店も小売店も事業を変換した場合に必要となるシステム構築費なども事業再構築補助金の対象経費となっています。
オンラインで販売するためのホームページの作成費用やシステムを導入する費用も対象となっています。ただし、パソコンやスマートフォンは対象外となるため注意しましょう。
オンラインで販売するシステムを導入するためにはパソコンが必要になります。しかし、事業再構築補助金ではパソコンやスマートフォン、車両といったような業務とは関係のない場面で使えるものは対象外となっています。
【製造業】工場の拡大・新規設備の導入
製造業の場合には工場の拡大や新規設備の導入に補助金を利用することが出来ます。例えば、今までに製造していた製品の需要が新型コロナの影響で減少してしまった場合に、別の製品の製造を始める場合などです。
工場の一部を拡大や改築し新しい設備を導入する際に事業再構築補助金を利用できるでしょう。さらに新規事業に従事する従業員向けの研修費用なども補助金の経費に含まれています。
ただし、人件費や従業員の旅費には利用が認められていません。研修を離れた場所で行う場合の移動費に事業再構築補助金は使えないので注意しましょう。
【サービス業】別事業転換のための建物改修
サービス業の場合には業務の縮小や今までとは全く違う業種への変換で事業再構築補助金の建物費に利用できます。まず、業務の縮小に関してですが、飲食店や小売店と同じようにオンラインへ移行できる業種の場合には建物の縮小が適応されるでしょう。
経済産業省では2つの業種で例をあげています。1つはヨガ教室などですが、新型コロナの影響で室内での開講が難しくなっているため、オンラインでの開講へ移行する場合です。
オンラインの場合には大きな教室は必要なくなるため、建物を縮小しオンラインに特化した構造へ変更できるでしょう。
もう1つはデイサービスなどの介護事業の場合です。
介護関係も新型コロナで大きな影響を受けている業種の1つですが、介護事業を縮小か売却し、新たに別事業を始めることが出来ます。
事業形態が完全に変わることになるため、建物の改修だけではなく、機器の導入にも事業再構築補助金を利用することが出来るでしょう。
事業再構築補助金の注意点
最後に事業再構築補助金の注意点について解説していきます。「 最大で1億円 」という言葉が先行しているため、注意点にはあまり注目されていませんが、重要な部分も多いためしっかりと確認しておく必要があります。
建物の改修着手は補助金の採択後
事業再構築補助金を利用した場合に建物費として施工に着手することになりますが、基本的に採択された後と考えておきましょう。補助金には審査があり、申請した全ての企業に対して補償されてるものではありません。
もし、不採択になった場合、事前に着手していた金額は全て自社で支払う必要があります。一番のリスクになり得ることなので、着手は事業再構築補助金が採択されてから進めるのが基本です。
「 事前着手承認制度 」も用意されていますが、不採択のリスクは変わらないため、着手は補助金の採択後と考えていたほうが良いでしょう。
事前の資金調達が必要
事業再構築補助金に限らず、補助金は振り込まれるまでに数ヶ月から1年ほどかかるのが普通です。つまり、事業再構築補助金が振り込まれるまでに施工に着手する場合には事前の資金調達が必要になります。
また、補助の規模が大きいのも今回の補助金の特徴になっているため、大規模な建物費になる企業も多いでしょう。全ての費用を自社でまかなえる企業は少なく、多くの場合には金融機関などから借り入れて着手することになると思います。
そういった場合には国の認定機関を探すときに金融機関を選んでおくとスムーズに進めることが出来ます。
事業再構築補助金は国の認定期間と事業計画を策定していくことになるため、事業計画と借入を同時に出来る金融機関が事業再構築補助金の申請には必須と言えるかも知れません。
他の補助金との重複は認められていない
原則として補助金の重複は認められていません。例えば、事業再構築補助金でも建物の改修や改築を行う際に、同じ内容の施工で2つ以上の補助金に申請すると不採択になってしまうでしょう。
事業が完全に別であった場合など、重複が認められる補助金もありますが、知識がなくては判断出来ません。自社で判断できない場合には、補助金の申請を得意としている申請代行会社などを利用したほうが無難です。
あくまで、同じ事業で2つ以上の補助金を利用することは基本的に出来ないと考えておくのが良いでしょう。
補助率は全額ではない
事業再構築補助金の補助額は、建物費の全額ではありません。用意されている枠ごとに補助額と補助率が定められているため、しっかりと確認しておく必要があります。
補助率は枠ごとに異なりますが、「 1/2〜3/4 」が基本となっています。補助率が多い枠でも全体の3/4になるため、自社が申し込む枠と施工する金額を比べて決定する必要があるでしょう。
補助金の返還を求められる場合もある
事業再構築補助金で返還を求められる可能性があるのは2つの枠です。
・卒業枠
・グローバルV字回復枠
この2つは事業再構築補助金の中でも返還の可能性があるため注意が必要です。卒業枠は中小企業が中堅企業へ成長することが目的となり、グローバルV字回復枠は中堅企業向けの枠と言えるでしょう。
卒業枠では中堅企業へ成長できなかった場合に補助金の一部を返還する必要があります。グローバルV字回復枠は中堅企業向けの枠になっているため、通常の枠と比べると補助事業終了後の付加価値額の年率が大きく設定されています。
どちらの枠も事業を成長させることを念頭に置いているため、未達成の場合には補助額の一部返還を求められることを把握しておきましょう。
関連記事:【完全ガイド】事業再構築補助金とは?
まとめ
今回の記事では事業再構築補助金の建物費を中心に解説していきました。事業再構築補助金は補助金の中でも補助額が大きいことで注目を集めています。
新型コロナの感染拡大で多くの企業が売上減少などの影響を受けています。特に飲食店は緊急事態宣言による時短営業や外出自粛により、業務形態の変換が必要とされているでしょう。
事業再構築補助金は主要の経費を建物費としているため、飲食店がデリバリーやテイクアウトに特化した店の形状に変更することが可能になっています。
2020年から大変な時期が続いていますが、事業再構築補助金を利用して新しい業務形態を確立しましょう。