近年、名称を聞く機会が増えた「 電子契約 」。この電子契約システムを使用すれば、紙が不要となりオンライン上で契約締結が可能となります。
そのため、リモートワークが推奨される現在は、その利用が増えているようです。
とはいえ、電子契約について万全の知識を持っていると言える人はまだまだ多くいないのではないでしょうか。
やはり、もとより使用されている書面での契約に慣れており、
「 電子契約システムへの移行が難しい 」
「 会社としては電子契約に移行したけれどいまいち使いこなせない 」
といった方がいるのではないかと思います。
本記事では、まだ電子契約に慣れないという方向けに、電子契約の基礎知識からメリット・デメリットをまとめています。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
電子契約とは
早速、「 電子契約 」について説明していきます。電子契約は、その名の通り書面ではなく電子データ上で契約を締結すること。
紙に押印するのではなく、電子署名やタイムスタンプの付与で締結を完了します。
つまり、元来の方法と比較すると書面の管理や押印の手続きの簡略化が可能になります。
電子契約の特徴
電子契約の大きな特徴は、先ほどから述べているように電子書類で契約締結を行う点。しかし、電子データは改ざんのリスクがあります。
そのリスク回避のためにタイムスタンプの付与を行います。タイムスタンプとは、電子的な時刻証明書。電子データがある時刻に存在していたことを証明する技術です。
関連記事:電子署名とタイムスタンプの組み合わせ|タイムスタンプの役割も
また、電子データとなるためサーバー上に保管されるという特徴もあります。印鑑と紙の不要、というだけでも人的コスト・費用コストも双方の削減につながりますよね。
関連記事:電子契約では印紙税を削減可能|その理由と印紙税の基礎知識
電子契約は違法ではありません
しかし、電子契約に法的効力はあるのでしょうか。また、違法なのではないかと思う方もいるかもしれません。
民事訴訟法の第228条によると、本人又はその代理人の署名または押印がある時に、真正に成立したものとして推定されます。
また、電子署名に関しては電子署名法で言及されており、本人による電子署名が行われている時は、真正に成立したものとして推定されます。つまり、電子署名も通常の契約締結同様の効力があるというわけです。
ただし、電子署名に関しては電子署名法の第2条で定義されており、その定義を満たした電子署名に限る点に注意してください。
2つの署名タイプがある
電子署名には2つのタイプがあります。それは「 電子署名 」「 電子サイン 」の2つ。時には同様の意味で使用されることもあるこれらの言葉ですが、厳密には異なります。
電子署名の1手段として電子サインがあると言われることが多いのですが、さらに詳しい違いを説明します。
電子署名
電子署名は所定の認証局に認証を受け、そこで発行される電子証明書を用いることで本人性を担保します。
関連記事:【解説】電子署名の仕組みを簡単に理解するために必要な基礎知識
電子サイン
電子サインは利用するサービスに登録したメールアドレスやID、パスワードなどを本人性の担保とします。相手方については、送付したメールアドレスやログを元にしています。
外部の機関の認証を受けている電子署名の方が信用性は高いのですが、電子サインの方が簡易に利用できるというメリットがあります。
現状、どちらの方法でも法的には問題ないため、自身の会社や取引先がどちらの方法であるかは確認しておく程度で良いでしょう。
関連記事:電子サインと電子署名の違い|導入するメリットやデメリット
電子契約のメリット
電子契約について簡単に説明してきましたが、いままでの説明だけでもメリットが多いことがわかったのではないでしょうか。
ここからは主に4つのメリットについて詳しく説明していきます。
1.業務の効率化
電子契約では、まず業務の効率化ができるというメリットがあります。もともと行なっていた、書面での契約と比較すると契約締結の工程を省略し、業務の効率化を行うことが可能。
書面で締結する場合、契約内容の調整後に、製本作業、社内での捺印申請、取引先への郵送、先方からの捺印と返送と、非常に多くの作業が発生します。
製本担当者、押印担当者がそれぞれ異なることも多く、作業が滞るケースも多いでしょう。また、郵送時の事故や取引先のほうで作業が停滞する可能性もありますよね。
しかし、電子契約となれば先ほどあげた作業がほとんど発生しません。これにより、業務の効率化が図れるわけです。
2.コスト削減
先ほどあげたように、業務の効率化に伴ってコストの削減も可能。作業に関わる時間的なコストや人件費の削減だけでなく、作業に必要な物の削減もできます。
例えば、製本に必要な紙や印紙税、郵送に必要な郵送費用や封筒など多くのものが必要となっています。また、締結した契約書を保管するためのスペースも必要。
電子契約では、これらの全てが不要になり、大幅なコスト削減につながります。
3.コンプライアンスの強化
電子契約は、改ざんのリスクがある、と述べましたが、それは紙の契約書でも起こりうることです。さらに、紙の方が保管が万全ではなく第三者の手に渡る可能性もありますよね。
また、電子契約には電子署名やタイムスタンプによる防止策もあり、データの閲覧には権限が必要となることから、紙以上にコンプライアンスが強化されることになるといえます。
4.リモート状況でも契約締結が可能
繰り返しになりますが、電子契約は、押印手続きや製本の必要がありません。やりとりもメールや電子契約システムを利用するため、家にいながら全ての作業を完了することができます。
リモートワークが推奨される昨今においては、非常に大きなメリットといえるでしょう。
電子契約のデメリット
もちろん、電子契約にはいくつかのデメリットがあります。こちらについても詳しく説明していきます。
取引先への説明が必要
まず、取引先へ説明をする必要があります。既に契約を締結済みの取引先であっても、契約更新時や新規で契約を締結をしなければならない場合がありますよね。
そういった時に、取引先への説明が発生するというデメリットがあります。
また、以前とは異なるフローで契約締結をしなければならないことは、相手方にとってはデメリット。取引先が電子契約を導入していない場合には理解が得られない可能性もあります。
また、利用するシステムによっては取引先にも利用料金が発生するケースもあります。取引先の電子契約システムの導入や理解が進まない場合、一部では書面での契約が残る可能性も。
こういった説明や取引先への依頼の発生はデメリットと言えます。
社内調整が必要
また、電子契約システムに導入には社内調整が必要です。先ほどの取引先の状況が自社だった場合、まず法務担当者に対する説明や導入依頼が必要。
また、今までの業務フローが大きく変更になるため、運用体制を含め、整備に時間がかかることが予想されます。
サイバー攻撃の危険性がある
電子契約はインターネット回線を通して情報のやり取りや手続きを行うため、サイバー攻撃を受ける可能性があります。
もちろん、近年の電子契約システムのセキュリティは向上していますし、このリスクを想定していないシステムはあまりないでしょう。
ですから、システム導入時に十分確認を行うことで避けられるデメリットとなっています。
電子契約不可の契約がある
電子契約は法的効力を持つ、と述べましたが、契約の中には電子契約不可のものもあります。法令の定めにより、紙での締結が必須とされている契約の例をいくつかあげます。
- 定期建物賃貸借契約
- 宅地建物売買等媒介契約
- マンション管理業務委託契約
- 訪問販売等に置いて交付する書面
他にもいくつかあるため、所属する会社や取引先の主な事業によっては、電子契約の導入が難しい場合もあります。
確かに、賃貸の契約書を書面ではなく、電子で進行・管理することはあまり想像がつきません。
いくら便利な電子契約でも、ケースによっては使用できないことを覚えておきましょう。ただし、法改正によって電子可能な範囲は増えているようですので、定期的に法を確認することがオススメです。
電子証明書の取得が必要な場合がある
また、電子契約には2種類があるとも説明しました。このうち、電子署名の方法を取る場合、電子証明書の発行が必要となります。
この電子証明書の発行には従業員個人の情報が必要となるため、会社全体でまとめて行うことが難しく、導入のハードルが上がってしまいます。
もちろん、電子サインを使用するサービスを利用すれば簡単に電子契約を導入可能。こちらは、頻繁に使用する契約の種類によっても変わってくると思います。
電子契約導入時に必要なこと
さて、電子契約にはメリットとデメリットがあることを理解していただけたでしょうか。これらを加味し、電子契約システムを導入する場合に必要なことや流れについても説明していきます。
法務関係者への説明
まず、導入のためには法務部といった法務関係を担当する部署やその担当者への説明と了承を得る必要があります。
法務部は、社内で最も契約締結の際に稼働する部署のため、当然理解をしてもらう必要がありますよね。
メリット・デメリット以外にも、法的な効力があることをしっかり説明する必要もあります。ここはまず最初の課題となるでしょう。現場レベルでは了承していても、上層部ではなかなか理解を得られないといったケースも考えられます。
業務フローの見直し
法務や関連部署の理解と了承が得られたら、業務フローの見直しを行なっていきます。
ほとんどの会社は契約書の雛形があるでしょう。その雛形の文言が書面での締結前提になっていないかを確認し、場合によっては雛形の内容を変更しなくてはなりません。
また、書面で行う場合の業務内容とは大きく異なる部分や削減される部分が出てくるため、業務フローの変更も必要です。
書面締結が完全になくなるわけではないため、一部残しておく必要もあるためどの程度の割合が電子で完結できるのかを社内で話し合う必要があります。
電子契約システムの比較・検討
社内で合意を得られ、業務フローについても調整ができたら、ようやく電子契約システムの比較・検討を行います。
現在需要の高まる電子契約システムは多数あり、どのシステムが良いかを決定するのは難しいでしょう。
とはいえ、電子契約システムごとに特徴があります。この特徴を確認し、どういったものが自社に合っているのかに焦点を当て、絞っていくことがオススメです。
社内外への周知
電子契約システムを決定し、導入の目処がたったタイミングで社内や取引先へ周知を行いましょう。取引先によっては、電子契約に難色を示し受け入れてもらえない、といったこともあるかもしれません。
また、社内外問わず知らない間に電子契約システムが導入されていた、というのは不信感につながります。周知は徹底しましょう。
これらのステップを全て完了したら、晴れて電子契約システムの導入が完了します。
代表的な電子契約サービス
ここまで、電子契約について説明してきました。続いては、電子契約を可能にするサービスについて紹介していきます。
NINJASIGN
NINJASIGNは、株式会社サイトビジットが提供するサービス。「 資格スクエア 」というオンライン×リアルの資格予備校の運営も行っています。
オンラインサービスを提供しているということで、オンライン上でのシステムは十分備わっているように感じますよね。
こちらのサービスは、ファイル形式がPDFの他、Googleドキュメントに対応しているという特徴があります。
有料プランであれば、自身で作成したテンプレートの登録も可能。承認パターンの登録も可能、と類似の契約を頻繁に結ぶ場合にオススメです。
契約終了日の入力や、更新期限のリマインド設定も可能。過去に紙で締結した契約書についても保管・管理が可能です。
ただし、対応しているのは電子サインのみで電子署名には対応していません。
関連記事:ニンジャサイン( NINJA SIGN )の使い方、特徴や料金
クラウドサイン
引用:クラウドサイン公式HP
クラウドサインは、弁護士ドットコムが提供するサービス。弁護士ドットコムというと、法律相談ポータルの運営もしているため、法律に関する安心感がありますよね。
こちらのサービスは、複数の外部サービスと連携をしています。連携可能サービスは下記の通り。
- Box
- kintone
- Salesforce
- Hubble
- Slack
サービス内にテンプレートが多数あり、契約書を作成した経験があまりない、といった方が多い会社にオススメです。
受信する側は登録の必要がなく、費用も発生しません。
ただし、対応しているのは電子サインのみで電子署名には対応していません。
関連記事:電子契約システム「 クラウドサイン 」|評判・導入メリット
DocuSign
引用:DocuSign公式HP
DocuSignは、グローバルに利用されているサービス。世界180カ国以上、44言語での署名が可能となっています。
こちらのサービスは、世界各地での厳しいセキュリティ基準を満たしているということで、海外の会社とのやりとりが多い会社にオススメです。
文書の有効期限の設定やワークフローの設定が可能。また、保管期限の過ぎた契約書の自動削除機能もあります。
ただし、対応しているのは電子サインのみ、タイムスタンプ未対応といった点にはご注意ください。
まとめ
本記事では、近年名前を聞くようになった電子契約について説明していきました。電子契約というと、セキュリティ面での懸念や導入ハードルへの懸念がまだまだあるかと思います。
しかし、コロナ禍においてリモートワークが推奨されるようになり、むしろ書面での契約締結の方がハードルが高くなっているのが現状。
電子契約システムも増えており、選択の幅も広がっている今、システムの導入を検討する機会なのではないでしょうか。
ぜひ、本記事を参考にして電子契約の検討を進めてみてください。