新型コロナの感染拡大により、「 非対面 」「 オンライン 」の需要は急速に高まっています。
そんな中で注目されているのは、DX( デジタルトランスフォーメーション )でしょう。
DXはIT化の先をいく企業や業種の変革、革新のことです。
日本では、DXについて完璧に理解している企業や人はまだまだ少なく、日本のDXも世界に比べれば進んでいません。
今回の記事では「 DX( デジタルトランスフォーメーション )の活用事例 」と「 DXのメリットやデメリット 」を解説していきます。
資生堂
資生堂は美容メーカーとして有名ですが、DXを上手く活用しています。
注目すべきは「 オプチューン 」という月額制のサービスでしょう。
オプチューンはスキンケアマシーンとスマホのアプリを組み合わせたもので、肌の状態をアプリで計測し、その日の肌に合った美容液を配合し抽出してくれます。
今までは、肌がどんな状態でも市販されている美容液から選ぶしかありませんでしたが、オプチューンはIoTを使った画期的なシステムで、その日の肌の状態をアプリを使って計測し、毎日、違う美容液を配合する機械を組み合わせたものになっています。
業界にも変化をもたらしたことからも、上手くDXを活用できた例と言えるでしょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とIT化の違い
DXはIT化と同じように捉えている人も多いですが、実際は異なります。
IT化はあくまで、アナログのシステムをデジタル化していくもの、DXはITも活用して、今までの仕事方法を変え、
業界にも変化をもたらすものです。
少しややこしいように聞こえますが、ITはあくまでシステムでありDXはITを含めた、企業や業界に変化をもたらすと考えましょう。
日本企業のDX活用事例
まずは日本企業のDX活用事例を見ていきましょう。
現在、日本でDXに取組んでいる企業のうち、「 DXに成功しているのは10%ほど 」と言われています。
三井住友銀行
三井住友銀行では年間35,000件にもなる「 お客様の声 」を仕分けるために膨大な時間と人件費を割いていました。
しかし、「 テキスト含意認識技術 」どういう技術を導入したことにより、特定の文章の抽出や仕分けが可能になり、人力よりも精度が高いものになりました。
他にもコールセンターにAIを導入したことで、簡単な問い合わせの待ち時間も少なくなり、人件費の削減につながっていることから、DXを活用できた良い例と言えるでしょう。
日本コカ・コーラ
最近CMで見る機会も多い「 Coke ON 」というアプリがコカ・コーラ社のDX活用事例です。
Coke ONは専用のアプリを起動し、自動販売機で商品を購入する時にスマホをかざすとスタンプが1つ加算されます。
スタンプは15個で1つの商品と交換でき、また、知り合いに送ることもできます。
スマホと自販機をつなぐCoke OnはDXを上手く活用した一例と言えます。
DXを活用するメリット
DXを促進することで様々なメリットがあります。
大きく3つに分けることができるため、順番に解説していきます。
現在のシステムからの移行
IT化を進めていなかった企業であれば問題はありませんが、ほとんどの企業では何かしらのIT化が進んでいるでしょう。
すでに業務の中心になるようなシステムが完成してる場合は、新しいシステムへ移行することは簡単に出来ません。
このような状態からDXを進めて行くには、業務に関係の少ないところから進めて行く必要があります。
大きくシステムを変更してしまえば、中心となっている業務に影響を与えてしまい、DXどころではなくなります。
また、部署が多い場合は全体的に影響を与えることになり、より細かく慎重にDXを進めて行く必要が出てくるでしょう。
日本は世界的に見てもDXが進んでいないと言われていますが、多くの原因は既存のシステムが完成されていて、新しいシステムを導入しづらいためです。
時間とコストがかかる
DXは大規模な取り組みで、完了するまでに長い時間とコストがかかります。
取り組み始めてから最低でも3年かかると言われており、新しいシステムの導入や人材の確保など、かかるコストも安くはありません。
つまり、時間にも資金にも余裕がある企業でなければ、DXを完了させる前に会社が回らなくなり、中途半端に終わってしまう可能性があります。
①業務が効率的になる
一番のメリットは業務の効率化でしょう。
IT化することで、今まで人がやっていた作業を減らし、業務の効率化が期待できます。
人がやっていた煩雑な作業をIT化すれば、人為的ミスも減らせて、サービスや品質の向上につながるでしょう。
②変化への対応が簡単になる
新型コロナの影響で、企業の多くは働き方を変える必要がありました。
その中でも元からIT化を含めたDXを進めていた企業は、大きな変更をする必要はなく、比較的早い対応をすることができました。
他にも地震や台風といった自然災害が起きた場合にも、DXを活用していれば柔軟に対応することができるでしょう。
何かあれば会社への出勤をなくし、自宅でも業務ができる状況を作っておけば、生産性を下げることなく通常に近いパフォーマンスを発揮することが出来ます。
新型コロナの影響がいつまで続くか分からない中では、早急にDXを進める必要があるでしょう。
③新製品・サービスの開発が可能に
DXを活用すれば新製品やサービスの開発もしやすくなるでしょう。
例えば、アメリカのAmazonでは無人のコンビニがスタートしています。
Amazonはもともと本屋として運営を始めていますが、EC市場の中では飛躍的な伸び方をし、今では日用品から嗜好品まで、
本だけではない様々な商品を取り扱っています。
ECからコンビニまで手がけるようになったのは、まさにDXの活用を進めて成功したからでしょう。
他にも、スマートスピーカーとECを融合させ、商品の購入にかかる工数を簡略化したり、1クリックボタンを具現化し、ボタンを押すだけで商品の購入が完了する商品を作ったりと、DXを活用することで様々な新商品や新サービスを世に送り出しています。
DXを活用するデメリット
DXを進める上でデメリットになることもあります。
DXは決して簡単なことではなく、DXを進めている日本の企業も完全にDXを活用しているのは全体の数パーセントと言われています。
また、中長期的ではなく短期的に結果を求める必要がある企業などではDXがなかなか進められない1つの原因となっています。
DXを進めるために必要なステップ
DXは単純に社内システムをデジタル化するだけではないことを解説してきました。
デジタル化はあくまで最初の一歩でしかなく、DXにはデジタル化以降のステップのほうが重要になってくるでしょう。
①システムのデジタル化
まずは「 システムのデジタル化 」です。
一般的にIT化と呼ばれるのがこの部分で、既存のシステムでアナログな方法があるのであれば、最初の段階でデジタル化していく必要があります。
例えば、勤怠管理や経費管理をアプリやツールの導入によって簡略化するだけでなく、より詳細なデータを得られるシステムにできるでしょう。
また、業務データも蓄積できるようになるでしょう。
②業務の効率化
業務の効率化は「 デジタル化 」で蓄積したデータを活用していく段階になります。
蓄積したデータを元に業務の無駄を省き、効率化していくことでDXが大きく進み出すでしょう。
DXを進めている多くの企業がこの段階にいると言われており、重要、かつ難しい段階でもあります。
業務の効率化だけでも十分な効果が期待できますが、DXにはまだ先があります。
③社内システムの共通化
社内全体でシステムを共通化していく段階です。
ここまでは部署ごとなどでシステムが分かれている状態ですが、社内全体が同じシステムで動けるように共通化していく必要があります。
社内のシステムを共通化させることで、今まで関わりのなかった部署同士で情報が行き交うようになるでしょう。
部署同士でデータなどの行き来が始まれば、今までの業務からの応用もできるようになり新しいサービスや製品が生まれる可能性が高くなってきます。
DXの大きなメリットが出始めるようになってくる段階でしょう。
④新しい組織化
ここまでのステップで蓄積してきたデータや基盤をもとにDXをメインとして運営していける新しい組織を作っていきます。
ITを中心に扱う部署を作るということがイメージしやすいでしょう。
蓄積したデータの解析や、データを元にした新しい戦略を練ることになります。
今までには出来なかった新しいサービスや商品の開発を積極的に行っていく段階です。
⑤ステップ4までの最適化
最終段階ですが、DXで重要なのは自社だけではなく「 業界に革新を起こす 」ということです。
DXに取組んでいる企業の中でも、この最終段階に入っていることは少なく、ごく一部の企業のみがDXを完全に活用していると言えるでしょう。
最初に紹介した、DXを活用している3社は業界としては初の試みとなるため、DXの最終段階に入っていることになります。
DXの活用を始めている企業は、この最終段階を目指して進めています。
DXの活用が失敗する原因2つ
全ての企業がステップ通りにDXを進めれば成功するわけではありません。
日本企業でDXを進めている企業は全体の70%以上と多い数字を表していますが、DXに成功している企業は数%程度と言われています。
DXが失敗する主な原因を2つ解説していきます。
①DXの意味を理解していない
一番、多い失敗例はDXを理解しておらず、成功例だけを見てDXを進めてしまう場合です。
DXはシステムをデジタル化したり、データを収集して活かしていくだけではありません。
DXは自社にも業界にも「 革新・変革 」をもたらすものです。
「 新システムを導入したから 」「 データの蓄積を始めたから 」DXが上手くいくわけではなく、自社に必要な内容を上手く活用していくことが大切です。
DXはあくまで手段であり目的ではありません。
DXを進めているからと満足するのではなく、1つの手段としてDXを活用していく考えが必要でしょう。
②システムのデジタル化が進んでいない
「 DXするために必要なステップ 」でも解説しましたが、一番最初に必要となるのが「 デジタル化 」です。
例えば、現場だけではなく、事務でも紙ベースで様々な管理をしていた場合は、まず事務関連のデジタル化を始めていきましょう。
いきなり現場でデジタル化を進めると困惑を招き、DXも最初の段階で失敗してしまう可能性が高くなります。
事務をデジタル化するだけでも、今までの発注履歴や注文履歴が簡単に確認できるようになり、無駄になっていた在庫や作業を省くことが出来ます。
現場も事務がデジタル化することで、徐々にデジタルに対する抵抗が小さくなり、いざ現場をデジタル化する際はスムーズに移行することができるでしょう。
DXに重要なテクノロジー
DXを進める上で重要になってくるテクノロジーを確認しておきましょう。
ここ数年で耳にする機会が増えてきているため聞いたことはあるはずです。
しかし、どんな役割をするのか理解できている人は少ないでしょう。
主に知っておいたほうが良いものを4つ解説していきます。
①IoT
IoTはInternet of Thingsの略で日本語では「 モノのインターネット 」と訳されます。
もともとインターネットはパソコンなどのコンピューター同士を接続するためのものでしたが、最近ではテレビやスピーカーなど、様々な電子機器と接続されるようになり、総称としてIoTと言われています。
例えば、離れた場所のモノの動きや情報を知ったり、行動までも制御できるようになっているのはIoTの力と言えるでしょう。
活用事例で紹介した資生堂のオプチューンはモノとインターネットをつないでいるIoTの活用事例です。
業種にもよりますが、IoTはDXに必要なテクノロジーになってきます。
②クラウド
有名なのは「 クラウド上に保存 」ではないでしょうか。
今までであればスマートフォンで撮影した写真や動画はスマートフォンに記録していました。
しかし、クラウドサービスを使えばスマートフォン本体ではなく、ネットワーク上に保存できるため、スマートフォンの容量を気にする必要がなくなってきています。
Googleが提供しているGmailもアプリのインストールは必須ではなく、インターネット上でメールを閲覧できることからクラウドサービスと言えるでしょう。
DXでは共有が必要になってくるため、クラウド上で利用できるサービスが必須になってきます。
③AI
最近では一番、聞く機会の多い言葉はAI( 人工知能 )だと思います。
「 人間の知能を人工的に再現したもの 」という定義が一般的で現在では様々な家電にAIが搭載されています。
スマートフォンやスマートスピーカーに搭載されているAIが一番身近で分かりやすいのではないでしょうか。
問いかけに対してプログラムされている答えから導き出すという方法が一般的ですが、最近ではクラウド上で問いかけや答えのデータを記録、解析し、さらに詳細な答えが出せるようになってきています。
IoTとクラウドも兼ね合わせたテクノロジーと言えるでしょう。
④5G
2020年よりサービスが開始された5Gは新しい世代の通信システムです。
「 高速で大容量の通信 」「 多数の機器への同時接続 」の2つが5Gの大きな特徴でしょう。
例えば、スマートフォンを使って家の電化製品を操作したり、様々な業種で使われている機器と接続することで遠隔操作などが可能になってきます。
4Gではあくまでスマートフォンのみの操作が多かったですが、高速で多数の機器への同時接続が可能になる5Gでは、ビジネス面での利用も多くなってくると見られています。
まとめ
今回の記事では「 DX( デジタルトランスフォーメーション )の活用事例 」を中心に解説してきました。
世界的にDXは活用されており、日本でもDXを進めている企業は多くなってきています。
DXを活用することで、今までには出来なかったサービスや新商品の開発が可能になり、無駄だった業務も減っていくことになるでしょう。
しかし、DXを進めていくためには必要なステップもあり、難しいことが多いというデメリットもあります。
今後はさらにDXを活用していく企業は増えていくため、今からDXの理解を深め活用していくことをおすすめします。