そもそもブランディングとはどのような企業活動を指しているのでしょうか。
例えば、ブランドマネージャー認定協会では、ブランディングを「 自社が顧客に抱いてもらいたいイメージと、実際に顧客が持つイメージを可能なかぎりイコールに近づける活動のこと 」としています。
また、博報堂コンサルティングでは、 ブランディング活動を「 ブランド提供価値( 顧客の期待に対してブランドが提供する価値 )が中心にあり、それを起点に、コミュニケーション、マーケティング、マネジメント、アクティベーション( ユーザー体験の施策 )が行われる 」としています。
“ イメージ ”も“ 価値 ”も非常に抽象的な言葉ではありますが、誰しも商品やサービスへのイメージが、購入時の選択に影響した経験があるのではないでしょうか。
例えば、母親が使っていて子供の頃から馴染みのある醤油ブランドには安心感があり、ネットスーパーで指名買いをしている。軽妙な広告展開でくすりと笑わせてくれる消費財メーカーには、親しみを覚え、ドラックストアで手に取ってしまう、などです。
ユーザーからの好感を獲得することは、市場での優位性を高めることになります。
ホームページをブランディングに活用するためにはどうしたらよいのか。
ホームページとブランディングの関係性やブランディングの考え方、ブランディングを考慮したホームページの作成方法について考えていきます。
ブランディングにおけるホームページのメリット
まずはブランディングに対してホームページが、どんな役割を持ち、効果を産み出すのか整理したいと思います。
ホームページは商品やサービスをユーザーへプレゼンテーションする場です。
あなたの商品やサービスがどんな良い効果をユーザーの生活に与えることになるのか、それを情緒的側面と機能的側面との双方から訴求することが出来ます。
ホームページはブランディング上、以下の3点のメリットがあるといえるでしょう。
- ユーザーにとって利便性がある
- 企業から自由な情報発信が出来る
- 企業の情報のハブ( 中心地 )になる
ホームページのメリットについてひとつずつ説明していきます。
ユーザーにとって利便性がある
ユーザーが好きな時にアクセスし情報を得られるという利便性がホームページにはあります。
企業に対してユーザーが持つイメージというのは重要ですが、イメージを醸成するのは一朝一夕で成せることではありません。
ユーザーが興味関心を持ち、もっと知りたいと思ったときにWEB検索しても何も情報が出てこなければ、ユーザーの行動はそこで終わり。興味関心は失せてしまいます。
ホームページにアクセスし情報を得て興味関心を満たせれば、購買につながるかもしれませんし、つながらなかったとしても記憶には残るでしょう。
リアルな移動行動が制限されがちなwithコロナの社会ではWEB行動は以前より需要が高まっています。だからこそ常時アクセス可能なホームページの存在が大切なのです。
企業から自由な情報発信が出来る
WEB上に掲載できる情報は無限です。
もちろんユーザーの手間を考慮し、読みやすくある程度は簡潔にまとめる必要はありますが、さまざまなタイプの情報発信を自由なボリュームで行えます。
情報のボリュームに制限があっては難しいのが、情緒的な訴求。発信するボリュームが自由なホームページでは重点を置きたい部分です。
そこで、感情や空気感を伝えるためにビジュアルを多用することをオススメします。また、イメージをわかりやすく伝える手段として動画コンテンツは最適です。
ホームページへアクセスすることが、ユーザーにとってポジティブな体験となる情報発信をしていきましょう。
企業の情報のハブ( 中心地 )になる
WEB上の企業活動はホームページだけに限りません。
PR活動によってニュースメディアに取り上げられたり、インフルエンサーが話題にしたりするかもしれません。
さらに複数のSNSツールに企業の公式アカウントを持つこともあるでしょう。
ホームページはそういった情報をまとめて集積しておく場所になります。
ユーザーがふと目にした広告や投稿で、あなたの商品やサービスを検索した際に、確実に辿りつける場所として用意するのがホームページ。
ブランディング目線で整えられたホームページがあれば、ユーザーによるせっかくの能動的行動を無下にしません。
加えて、ユーザーがあなたの商品やサービスにどんな入口経由で最初に触れたとしても、最終的にホームページに着地させることで、商品やサービスのイメージを統一して記憶させることを狙います。
ブランディングによって得られる成果
正しくブランディングを行うことで企業活動にはどんな改善が見られるでしょうか。
それは以下の4点にまとめられます。
- ユーザーのロイヤルティ( 企業への愛着度 )を獲得
- 価格競争からの離脱
- 宣伝コストの抑制
- 採用活動の安定
詳しい内容を1つ1つお伝えしていきます。
ブランディングでユーザーのロイヤルティ( 企業への愛着度 )を獲得する
新たなユーザーを獲得するということがどれだけ難しいか、商売をしていて知らない方はいないでしょう。
新規ユーザーを獲得するコストは、既存ユーザーの5倍コのストがかかると言われます。
企業としての人的リソースや資金を投じてようやく購入へと至らしめたユーザーとは、その後も末長いお付き合いをしたいものです。
商品やサービスに良いイメージがあり、素晴らしい体験をしたユーザーにはロイヤルティが形成されます。
ロイヤルティとはユーザーが、ある商品やサービスに対して持つ信頼や愛着のこと。
ロイヤルティを持っていれば、競合の商品やサービスにユーザーが流れる可能性は減少します。また良い口コミを広げてくれる宣伝効果も期待できるのです。
ブランディングで価格競争から離脱する
純粋想起という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
あるカテゴリー内で商品やサービスの名称を挙げてもらえる状態のことです。
「 スニーカーと言えば…」、「 炊飯器といえば… 」、「 クレジットカードと言えば… 」のように物自体から商品やサービス名を紐付けて覚えてもらえていたら、購入の際に選ばれる確率は上がります。
商品やサービス名が完全にユーザーの頭の中に刷り込まれているというのは、他社と差別化できているということ。
ユーザーが購入を検討する際に他社と比較される可能性が低くなり、値下げといった価格競争から抜け出すことができるのです。
ブランディングで宣伝コストを抑制する
イメージがユーザーの中に在るということは、商品やサービスについて説明が済んでいるということです。
情報が溢れる現代社会において、それは大きなリードです。
説明を伝えるためには目に留まる手法で宣伝する必要があり競合よりも目に留まらせようと考えればよりコストは増大。
ただ、説明する必要がない状態であれば説明のための広告が必要ありません。企業活動内の宣伝コスを抑えることができるでしょう。
ブランディングで安定した採用活動を行う
企業にとって社員は資産です。より良い人材を確保するにはこれまた大きなリソースが投じられています。
ユーザーへ良いイメージを醸成できていれば、より意欲的で優秀な人材を採用しやすくなります。結果、人材確保のコストを低く抑えることができます。
ブランディングホームページ作成を準備する
ホームページ作成で心を配っているのはデザインでしょうか。SEO( 検索エンジン最適化 )でしょうか。
ブランディングとはデザインやSEOといった手段の根底に在るものです。
ブランディングを担わせるホームページを作成するにはどんなことに気をつければ良いのか考えていきます。
関連記事:ホームページにおけるデザイナーの役割とは
イメージや提供価値を見つける
ブランディングでのイメージや提供価値は自社本位で決めるものではありません。
当記事の始まりで記した通り、博報堂コンサルティングは“ ブランド提供価値=顧客の期待に対してブランドが提供する価値 ”と設定しています。
顧客に求められている価値を無視は出来ません。顧客側の観点を置いてきぼりにすると、身の丈に合わない誇大広告のようなイメージを打ち出すことになってしまいます。
ブランディングでのイメージや提供価値を決める際には、ユーザーが喜びを感じている対象が何であるかをまずは分析します。
それを、商品やサービスのアピールポイントや企業としての成長戦略と重なり合う領域で絞り込み、イメージや提供価値として定めるのです。
この絞るという作業が、個性や特色となって、あなたの商品やサービスを輝かせてくれます。
見つけるためのマーケティング手法としては強み・弱みを整理する「 SWOT分析 」や、市場・競合・自社の重なる点を見つけ出す「 3C分析 」、顧客が購入に至るプロセスを書き出し、行動・思考・感情との関わりを把握する「 カスタマージャーニーマップ 」といった手法があります。是非、試してみてください。
ブランドコンセプトを作る
絞り出したイメージや提供価値をコンセプトとしてまとめます。
コンセプトは、ユーザーに対して企業が行う約束事だと思ってください。
「 私たちの商品やサービスは、こういった意図と姿勢を持ってあなた方ユーザーへ向けて提供していますよ 」という約束です。約束事とは誰と結ぶかという要素が含まれます。
この“ 誰と ”がブランディングのターゲットになります。
ブランディングの成果に関する項目でユーザーのロイヤルティ( 企業への愛着度 )について触れました。
リアルな人間関係でも約束を必ず守る相手には信頼が芽生えますよね。
ユーザーへの約束事を決めてそれを果たす。そうしてブランディングは成果を産み出すのです。
ブランディングホームページの評価指標を決める
ブランディングホームページの効果を測定し評価するための指標には幾つかあります。
例えば、商品やサービスの認知、好感度、企業イメージの3項目の向上。
好感度は購入意向や他者推奨の度合を調査する場合が多いです。
ユーザーに感じてほしいイメージのワードを設定し、それにあてはまるかどうか調査するという手法もあります。
ワードとは例えば「 先進性がある 」、「 洗練されている 」、「 新しい生活提案がある 」といったもの。
イメージや価値、コンセプトから派生したワードを用いましょう。
数値的目標を設定しておくことで、施策のブレは最小限に留められますし、方向展開も容易になります。
作成や運営開始前に効果指標を決めておきましょう。
ブランディングホームページ事例
作成の参考になりそうなホームページをいくつか紹介します。
ニベア
画像出典元:「 ニベア 」公式HP
ニベアのキャッチコピーは「 肌がふれあう。ただそれだけで、人は人をあたためることができる。まもることができる。一生の素肌に。」
親からの深い愛情を感じさせるビジュアルが多用されています。
ホームページを体験することでユーザーに”ニベア”というブランドとともに愛情や優しさといった感情があることを刷り込みます。
ブランドのシンボルカラーであるミッドナイトブルーがホームページ内で統一されている点もポイント。
ペティオ
画像出典元:「 ペティオ 」公式HP
ペットのいのちと真摯に向き合っている姿勢を感じさせてくれるホームページ。
画像だけでなくコラムやキャンペーンなどで、暮らしの中にペットという存在が溶け込んでいる様子を映し出します。
それはペットと人の共存できる社会を見せています。
併せて飼い方といった専門知識も豊富にあることで、商品やサービスの特徴が際立っています。
レッドブル
画像出典元:「 レッドブル 」公式HP
CMで繰り返し使われている「 翼をさずける 」という印象的なキーワード。
そのキーワードはホームページでも強調されています。
疲れた体に鞭打つような存在であったそれまでのエナジードリンクとは一線を画す独自のポジションをレッドブルは取りました。
エキサイティングで冒険的な活動を支援するというレッドブルの存在意義をホームページによっても示しているのです。
公式HP:https://www.redbull.com/jp
横浜ゆうみらい小児歯科・矯正歯科
画像出典元:「 横浜ゆうみらい小児歯科・矯正歯科 」公式HP
TOPページでアニメーションを使用。フォントも大きくかわいらしいタイプを選択。
「 小児歯科 」らしさが随所に見られます。
小児歯科専門医というコンセプトをはっきり打ち出すことで差別化を図っています。
公式HP:http://yuumirai.com/
すき屋
画像出典元:「 すき屋 」公式HP
すき屋の顧客層はファミリーと女性客。
ターゲットの要求に答えてテーブル席を増やすといった店内インテリアの整備やメニュー開発を行っています。
そのことがホームページからも伝わるよう、メニュー掲載のカテゴリーに子供や女性向け項目の追加や、安全安心の取り組みなどを打ち出しています。
あわせて、店舗検索の容易さやキャンペーンを見落とさないようなメニューバーのレイアウトなどユーザビリティへの配慮が漏れていない点も参考となるでしょう。
ブランディングホームページを作成する
実際にホームページの作成段階となった際に意識しておいてほしいポイントをまとめました。
ホームページのコンテンツを整える
コンセプト無しに作成物ごとに意思決定を行っていると、ユーザーへと与えるイメージがちぐはぐなものになりかねません。
例えば、自然派食品を原材料や製造方法に基づく栄養価の高さを理由に選択する人に向けた内容と、自分らしくこだわりをもって生活を送る丁寧な暮らしを求めて購入したい人に向けた内容は異なるはずです。
前者であれば、性能を数値化してグラフや表で見せ、機能的優位性を示すコンテンツが良いかもしれません。
ユーザーが知らない知識についてわかりやすく解説するような啓蒙型の情報発信をすることで、ユーザーにとって専門的な商品だと感じてもらえるのではないでしょうか。
後者であればユーザーの理想のライフスタイルをおくる著名人をアンバサダーとして登場させるのもいいかもしれません。
コンセプトを訴求できるコンテンツとして、どのようなものが適しているのかを取捨し、ホームページ内すべてのコンテンツを整理しましょう。
ビジュアルやデザインに落とし込む
あなたの商品やサービスがユーザーに対して掲げた約束と矛盾しない文体、写真、キャッチコピー、配色を選択しましょう。
ホームページ全体の統一感が大切です。どこを見ても同じ印象を与えることは、ユーザーへのブランドコンセプトの刷り込みにつながります。
ホームページから派生し、リアルな販促物。例えばパンフレットやちらし、名刺などもこの統一感が保たれていることが求められます。
そうすることでユーザーとの全ての接点をコントロールすることができます。
ホームページのユーザビリティに配慮する
ユーザーが探している情報にたどり着くまでに、不必要な手間が生じた場合には、どれだけ整ったコンテンツでも良い体験とは記憶されません。
イライラしたり困惑したりしたマイナスの感情が商品やサービスと共に記憶されてしまいます。
迷わずに遷移できる、探しやすい、そんな視点からもホームページを作りこみましょう。
関連記事:【レスポンシブ対応】スマホからの閲覧を想定したホームページの作り方
ホームページをメンテナンスする
ホームページはお問い合わせいただいたお客様と直接やり取りできることや、アクセス解析できることが、ツールのメリットとして挙げられます。
そのツールとしてのメリットを、お問い合わせ内容やアクセス解析の分析をすることで最大限に活用しましょう。
それがホームページのメンテナンスです。
ホームページは特別なことがない限り、365日24時間休むことなくアクセスを受け付けます。
よってユーザーの嗜好の変化に敏感であることが求められます。
できる限り迅速に対応できるように、ホームページの運用は専任の担当部署や担当者を設置することをおすすめします。効果の測定から課題を洗い出し、常時、アップデートしていきましょう。
関連記事:HPを作る際の費用はどれくらい?製作費、維持費の相場は?
ホームページ以外の施策をあわせて企画する
ホームページさえ存在していれば、自然とユーザーからのアクセスがあるというわけではありません。
情報過多の社会では見つけてもらうための工夫が必要です。
そのため、ホームページ以外でユーザーをホームページへ誘導する施策を企画しましょう。
ブランディングとして規定したコンセプトをもとに、ユーザーとの接点がどこに多いかを考え誘導の段階を設計しましょう。
例えばTwitter上でキャンペーンを実施したり、チラシを配布したり、広告を展開したりといった施策を検討するのです。
ブランドを構築するには、商品やサービスの品質、サポート、問い合わせ体制などを整えることも大切です。
まとめ
ブランディングにおけるホームページの役割についてお分かりいただけたでしょうか。
商品やサービスの魅力やビジョンと、外的環境を分析した上で、ユーザーにとっての喜ばしい価値をまずは見つけてください。
その価値をユーザーにとって利便性の高いホームページにて、戦略的に伝えていきましょう。
細部にこだわり整えていくことがブランディングホームページでは大切です。
Withコロナの社会ではWEB上での消費行動はますます活発化するでしょう。
ホームページは今まで以上に企業活動にとって重要なツールとなるかもしれません。
ブランディングがもたらす効果を理解したうえで、ホームページでの情報発信が出来れば企業活動の安定へとつながるのではないでしょうか。