電子契約は、従来の紙の契約書に比べて業務の効率化やコスト削減につながる便利な電子サービスです。
また、電子契約には法的効力があり、電子署名は本人の意思であると判断されるため、印刷や郵送にかける時間が省けて契約までの業務フローが円滑なのも特徴。
今回は電子契約に関する法律や導入する上で起こる問題や対策について解説します。
電子契約を運用するメリットや、失敗しない電子サービス会社の選び方のポイントもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
電子契約とは電子サービス上で行われる契約
電子契約とは、紙の書面の代わりに電子サービス上で行われる契約。
電子データ上で契約が交わされ、印鑑の代わりに電子署名または電子サインが押印として使われます。
電子契約は契約の締結がスムーズに行えるため、オフィス以外でも特に、テレワークや在宅勤務をする方にとって業務をより進めやすくしてくれる電子サービス。
関連記事:電子契約サービスとは|電子契約の用語・機能・選び方
電子契約には法的効力がある
電子契約には法的効力があります。
電子署名は印鑑の代わりに押印として認められており、電子証明書によって本人性を証明できるのが電子契約の仕組み。
そして、改ざん防止のためにタイムスタンプが発行されます。タイムスタンプとは、特定の時刻に電子文書が存在していたことを立証する技術。
タイムスタンプの技術により、電子文書が該当する時間以降に改ざんされていないことを確認できます。
つまり、以下の条件が電子契約の法的効力を証明できる大切なポイント。
- 本人の意思による契約
- 改ざんがされていない契約
電子契約に関する法律
電子契約書を取り扱う場合、電子データ上での文書の保存や電子署名に関して知っておくべき重要な法律があります。
電子契約に関する主な法律は以下の4つ。
1. 電子帳簿保存法
2. 電子署名法
3. e-文書法
4. IT書面一括法
それぞれの法律について詳しく解説します。
1. 電子帳簿保存法
「 電子帳簿保存法 」とは、国税に関する帳簿や書類を電子データへ保存する際の方法を定めた法律です。
正式名称は「 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 」。
「 電子帳簿保存法 」は1998年7月に施行され、保存期間や保存場所などの条件を満たす帳簿書類は電子データで保存できるようになりました。
( ※“電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律” 参照 )
2. 電子署名法
「 電子署名法 」とは2001年4月に施行された、電子署名が署名や押印と同等の法的効力を持つことを定めた法律です。
正式名称は「 電子署名及び認証業務に関する法律 」。電子商取引を促進させるのが目的の法律です。
( ※“電子署名及び認証業務に関する法律” 参照 )
関連記事:電子署名法の条文をわかりやすく解説
3. e-文書法
「 e-文書法 」とは電子データでの保存を認める法律のこと。この法律は、2005年4月に施行されました。
「 民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律 」と「 民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 」という2つの法律の総称です。
紙の文書での保存が義務付けられていた書類でも、条件を満たしている場合に限り、電子データでの保存が認められるようになりました。
( ※“民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律” 参照 )
4. IT書面一括法
「 IT書面一括法 」とは、書面での交付が義務付けられていた文書を顧客の同意を条件に電子書類で提供することを認める法律です。
正式名称は「 書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律 」。IT化が進む中、「 IT書面一括法 」が2001年4月に施行されて以降、メールやFAXなどの電子商取引を認められるようになりました。
( ※“書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律” 参照 )
電子契約を活用するメリット
法的効力のある電子契約にはいくつかのメリットがあります。
電子契約を活用するメリットは以下の5つ。
1. 業務の効率化につながる
2. コストを削減できる
3. 必要な書類を簡単に検索できる
4. コンプライアンス(法令遵守)が強化できる
5. 書類の喪失を防げる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
1. 業務の効率化につながる
電子契約を活用する1つ目のメリットは、業務の効率化につながること。
紙の契約書に比べて、電子契約は契約締結までにかかる時間やプロセスが早いです。電子契約を活用することにより、紙の契約書に必要な以下の業務を省略することが可能。
- 印刷
- 製本
- 押印
- 郵送
- 返送
電子サービス上で契約を交わすと時間や手間が省け、業務を効率的に行えます。
関連記事:電子契約では印紙税を削減可能|その理由と印紙税の基礎知識
2. コストを削減できる
電子契約を活用する2つ目のメリットは、コストを削減できること。
電子契約は印紙や封筒などを購入する必要がないため、費用を抑えることができます。例えば、紙の書類にかかる印刷代やインク代、郵送代などの費用を削減することが可能。
電子契約はコスト面において大きなメリットと言えるでしょう。
3. 必要な書類を簡単に検索できる
電子契約を活用する3つ目のメリットは、必要な書類を簡単に検索できるところ。
紙の契約書の場合、書類が増えると必要な資料や契約書類を探すのに時間がかかりますが、書類を電子上で保管することにより、必要なドキュメントを簡単に探すことができます。
電子サービス上で文書を保管すると、契約書を探す時間も短縮することが可能。
4. コンプライアンス( 法令遵守 )が強化できる
電子契約を活用する4つ目のメリットは、コンプライアンスが強化できること。
電子化した書類のデータベースをクラウド上に保管することで契約内容の改ざんを防止したり、紛失のリスクを軽減できたりします。また、データが消えてしまった場合にも復元することが可能。
電子契約は重要なドキュメントを厳重に管理できるため、コンプライアンスの強化に大きな期待ができます。
5. 書類の喪失を防げる
電子契約を活用する5つ目のメリットは、書類の喪失を防げること。
電子契約の場合、クラウド上で契約書を保管するため契約に必要な書類が破けてしまったり、紛失してしまったりする心配がありません。
電子契約を活用することで書類の喪失を防げるのも、大きなメリット。
関連記事:【徹底解説】電子契約のメリット・デメリット、サービス紹介も
電子契約のデメリット
電子契約には、効率的な業務の実現やコストカットなどのメリットがある一方で、デメリットもあります。
電子契約のデメリットは以下の3つ。
1. 電子契約が認められない契約書がある
2. 社内調整の大幅な変更が必要
3. サイバー攻撃のリスクがある
1. 電子契約が認められない契約書がある
まず、すべての契約書を電子サービスで取り扱うことができない点は、電子契約のデメリットと言えるでしょう。
具体的に、以下のような契約は紙の書面である必要があり、電子上での契約は認められていません。
- 定期借地契約
- 定期建物賃貸借契約
- 投資信託契約の約款
- 訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供
電子契約が認められない文書に関しては、別の対応を考える必要があります。
2. 社内調整の大幅な変更が必要
業務フローが大きく変わることにより、新しい仕事にかける手間や時間がかかる点も電子契約のデメリットと言えるでしょう。
電子契約を導入する場合、社内調整の大幅な変更が必要。
既存の業務内容に電子データの運用が新たに加わることで、どうしても社内調整への負担はかかってしまいます。
実際に電子契約を導入するまでに十分な準備期間を確保しておくことが大切。
3. サイバー攻撃のリスクがある
最後に、サイバー攻撃のリスクがあるのも電子契約のデメリットのひとつ。
紙の契約書によるデータの盗難や改ざんがあるように、契約書を管理しているサーバーへのサイバー攻撃の可能性もあります。サイバー攻撃のリスクを軽減させる為にもセキュリティの高いシステム選びが重要。
電子契約の問題点と解決策
便利かつ業務の効率化につながる電子契約ですが、実際に社内へ導入するにはいくつかの問題があります。
電子契約を導入する際に懸念される問題点と解決策について解説します。
1. 電子契約書と紙の契約書を使い分けて対応する
まず、電子契約を導入する際の問題点として、一部の契約書は電子契約が認められていない点が挙げられます。
前述にあるように、定期借地契約や’定期建物賃貸借契約などの一部の契約書は電子契約が認められていません。
契約書の取り扱いに関しては、電子契約書と紙の契約書に使い分けることで上記の問題は解決可能。
2. 社内や取引先に対して説明会を行う
続いての問題点として挙げられるのは、社内調整や取引先への連絡の必要性があること。
多くの人たちに電子契約の導入を認知してもらうまでに、多くの時間と労力がかかります。具体的には、社内への業務フローの変更はもちろん、取引先に対する電子契約の依頼などです。
電子契約を円滑に取り入れていくには、社内や取引先に対して説明会を行うのが良いでしょう。
3. セキュリティ機能の高い電子契約サービスを選ぶ
最後に、サイバー攻撃のリスクがあるのも電子契約の問題点のひとつ。
業務を効率的に行える電子契約ですが、サイバー攻撃のリスクがあります。
電子データの盗難や改ざんを防止するにはセキュリティ面への配慮が大切。サイバー攻撃のリスクの問題を解決するには、セキュリティ機能の高い電子契約サービスを選びましょう。
電子契約を導入するには必要なステップがある
最終的に自社で電子契約を導入するまでにはいくつかの段階があります。
電子契約の導入に必要なステップを4つに分けて解説します。
ステップ①法務部門への説明
電子契約を導入するには最初に法務部門への説明が必要。
電子契約を導入するメリットや問題点をはじめ、電子サービスに関する法律を法務の担当者に説明しましょう。
ステップ②既存業務フローの見直し
続いてのステップは、既存業務フローの見直し。
電子契約を導入するにあたって既存業務のフローの見直しが必要です。
全体的な業務フローを見直して、
- 新たに加える業務
- 変更が必要な業務
- 変更が不要な業務
など、再度業務の流れを確認しましょう。
ステップ③社内や取引先への説明
そして3つ目のステップは、社内や取引先への説明。
社内スタッフや取引先へ電子契約の導入に関する説明をしましょう。
電子契約の取り入れや使い方をしっかり理解してもらうために、電子契約に関する法律や重要なポイントなどを共有しましょう。
ステップ④電子契約の申し込み
最後に、電子契約の申し込みをします。
電子契約のサービスを提供している会社は様々。自社の業務内容や希望に沿う、信頼できるサービスを事前に選んでおいてから申し込みをしましょう。
失敗しない電子契約サービスを選ぶ3つのポイント
数多くある電子契約サービスの中から自社に適した電子サービスを選ぶことは大切。いくつかのポイントを押さえることで、失敗しない電子契約サービス選びができます。
電子契約サービスを選ぶポイントは以下の3つ。
ポイント①セキュリティ対策がされている
ポイント②必要な機能が揃っている
ポイント③サービス内容が使いやすい
それぞれのポイントについて詳しくご紹介します。
ポイント①セキュリティ対策がされている
電子契約サービスを選ぶ1つ目のポイントは、セキュリティ対策がされていること。
情報漏えいや改ざんを防止するにはセキュリティ対策が重要です。セキュリティ面において、信頼できる会社と提携するためにも安全性の高いサービスを選びましょう。
ポイント②必要な機能が揃っている
電子契約サービスを選ぶ2つ目のポイントは、必要な機能が揃っているかどうか。
サービスを選ぶ際には、自社で活用したい機能が揃っているか確認しましょう。
特に、以下のような機能が付いていると便利です。
- テンプレート機能
- ワークフロー機能
- API機能
ポイント③サービス内容が使いやすい
電子契約サービスを選ぶ3つ目のポイントは、サービス内容の使いやすさ。
サービス内容の形式が複雑で使いにくいと、時間や手間がかかってしまいます。
サービスの使いやすさを把握するために、まずは無料プランを使ってみるのがおすすめです。また、法律面での相談やサポート対応など、サービス内容が充実しているとなお良いでしょう。
サービス内容の使いやすさや充実度を考慮することも良いサービスを選ぶポイントのひとつ。
関連記事:電子契約サービス比較18選|選ぶポイントや各社の機能
まとめ
今回は電子契約に関する法律や電子サービスの選び方のポイントについて解説しました。
電子契約には法的効力があり、電子データを使用する業務に関しては知っておくべき法律も存在します。
電子契約に関する主な法律は以下の4つ。
1. 電子帳簿保存法
2. 電子署名法
3. e-文書法
4. IT書面一括法
また、紙と電子の書類を使い分けたり、信頼できるサービスを選んだりすることで、電子契約の導入への問題を解決することができます。
社内での電子契約の導入を考えている方や電子契約に関する法律について知りたい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。