今回は、YouTubeの
- 自動削除と削除された理由
- 関係する著作権問題
- 第3者による通報の動画削除のルール
を主にお話します。
3か月で1000万の動画を自動削除
Youtube動画の自動削除は、実は今に始まった話ではありません。
この自動削除の機能自体はかなり前から存在しており、いくつかある違反条件に抵触しているとAIが判断した場合、配信者への通告なしに削除されるというものです。
これが機能するのは主に動画が一般の目に触れる前なので、世に動画が配信されるまでにこの門をくぐらなければならないということになります。
3ヵ月ごとにその報告レポートの更新なのですが、2020年の4~6月期に、一気に1000万件もの動画を自動で削除したというのです。
その前、つまり2020年1~3月期が約500万件だったことからもわかるとおり、「 不適切 」と判断された動画が増えているのです。
しかし、本当に「 不適切 」動画が増えただけなのでしょうか。
4~6月期に自動削除がされた動画には、新型コロナウイルス( COVID-19 )による影響が深く関係しているといわれています。
通常の不適切動画のチェックは人の手によって行われますが、社員の在宅勤務が増えた結果、YouTube社は自動削除のプログラムを改良。
その結果、削除された動画が倍増したとの見解を同社は出しています。
そもそもなぜ削除された?
YouTube社が在宅勤務を実施した関係で改良を施したプログラムによって、不適切動画と言われるものが大幅に削除されるようになりました。
しかし、実際のところ何がそのプログラムによって「 不適切 」と判断されるのでしょうか。
本章では、YouTube社によって行われる不適切動画の定義などについてお話します。
ガイドライン違反
まず大前提として、アップロードされる動画はガイドラインに違反していないことが条件となります。
ガイドラインに抵触する動画とは、公式サイトによると以下のようなものになります。
“…たとえば、ポルノ、暴力行為、嫌がらせ、悪意のある表現は禁止されています。YouTube では、人間とテクノロジーの組み合わせにより不適切なコンテンツを報告し、このガイドラインの違反に対する措置を講じています。…”
(引用元:YouTube コミュニティ ガイドラインの 適用について)
もう少し具体的なお話をすると、削除対象となる項目は「 児童の安全 」「 スパム・詐欺 」「 有害で危険な行為 」などの多岐に渡っているものの、では何がそれに抵触るのかは明確になっていません。
本来は人間が手作業で適切か否かを確認するものであるため、どこまで正確に適用されているかは疑問が残っていました。
YouTubeにアップロードされる動画は1日に数億本、それを人がチェックして判断するには相当な労力がかかるのはお察しのとおりです。
しかし、今回のプログラムのバージョンアップによってそのチェックシステムが変化し、自動で削除された動画が増えたのです。
要は動画内に少しでも不適切と判断されたものが含まれていたものが、プログラムによって削除された可能性があります。
また、機械による判定なので、見逃しがないのも削除動画が増えた理由の一つと考えられます。
サイト全体の健全化
YouTube社は、サイトの健全化に力を入れることを2019年に明言しています。
ユーザー数が全世界で増えたことにより、いつどこで誰の目に留まるかわからない状態ですべての動画を野放しにしておくことが危ないと考えられたためです。
「 開かれたプラットフォーム 」としての責任を持つYouTubeは、2018年には「 将来就きたい職業ランキング 」第3位に「 YouTuber 」と回答させるほど、小学生に絶大な人気を誇っています。
もちろんそれがすべてではありませんが、他にもはびこるフェイクニュースの存在、すさまじい影響力を考慮した結果でしょう。
YouTube社では、サイト健全化について「 4R 」という指針を掲げています。
具体的には、不適切な動画を「 Remove( 削除 ) 」し、ガイドラインのボーダーラインにある動画を「 Reduce( 減らす ) 」、その一方で信頼性の高い情報の価値を「 Raise( 大きくする ) 」ことでクリエイターたちに「 Reward( 報いる ) 」ことを目的とした指針です。
この指針に基づき、責任ある、かつ自由で「 開かれたプラットフォーム 」としてのYouTubeを守ろうとしているのです。
そのために、不適切な動画は削除されている、あるいは公開前に減らされているという構造になっていることを理解しておく必要があります。
YouTubeの未来のため
まもなくやってくる「 5G 」通信の時代。
YouTube動画が削除される理由のひとつには、YouTubeが担う次世代も大きく関係しています。
5Gの時代が到来すると、検索エンジンの主流はYouTubeになるといわれています。
2時間の動画をたった3秒でダウンロードできるその速さからもわかるとおり、今後の情報は視覚と音声、動画によって構成されることが主流となることが予測されているのです。
このため、今までYouTube動画での広告戦略を練ってこなかった企業やクリエイターが注目を集めるために動画作成を開始しているのもまた事実。
その過程で知らず知らずのうちに削除対象にされてしまっている可能性も考えられます。
YouTubeが検索のプラットフォームになるということは、今以上の責任と健全化が同社には求められます。
動画である影響力はすさまじく、文字媒体で説明されるよりもはるかに具体性を持った情報が世間の主流になるのですから当たり前の話です。
もし現在と同じような運営方法に基づいて、見逃された不適切な動画が世に出たとすれば、たちまちその影響は世間に出てきてしまいます。
「 百聞は一見に如かず 」という言葉があるとおり、今後検索の中心的存在となるYouTubeの未来のために、今からサイト全体の整備、健全化が本格化していくのです。
著作権問題は削除対象なのか
真っ先に思いつく動画の削除要件として、著作権侵害が挙げられることも多い昨今。
YouTubeだけではなく、現実でも厳しく規制されていますが、実はYouTubeにおける著作権侵害はよほど悪質だと判断されない限り一発アウトというほど厳しくはありません。
ただし、基準が緩いわけではなく、このあたりの知識も併せて持っておく必要があります。
その理由はYouTube動画の削除対象となる可能性が、不注意で上がってしまう可能性があるからです。
この章では、テレビなどの動画コンテンツを使用した場合と、有名な楽曲を使用した場合のYouTubeにおける削除対象になる動画について説明していきます。
テレビや動画の場合
YouTube動画を調べていると、ドラマやアニメ、CMまでアップロードされているものを見かけることがあります。
また、映画などの動画についてもそのままアップロードされたり、やや内容が編集されていたりするケースも数多く存在します。
これらをアップロードしている配信者のほとんどはアドセンスによる広告収入が目的です。
自分で1から動画を作成する必要がなく、話題性の高いドラマやアニメに頼れば一撃で収入を得ることができるからです。
当たり前のお話ですが、これら別の動画コンテンツを使って収益化をすることはYouTube動画のガイドラインだけではなく、Googleアドセンスの違反にもなります。
テレビアニメやドラマ、ニュースやスポーツの映像などには、それを放映したテレビ局に著作権があります。
「 ニュースやスポーツは、どこの局でもやっているし法的にも問題ないのではないか 」という声もありそうです。
確かに法的解釈で行けば、ニュースは報道であるため著作権侵害には当たらないように思えます。
しかし、これを著作物として定義しているYouTube社からすれば、ニュースでも著作権侵害とみなされるのです。
今現在YouTube上で公開されている動画も、たまたま残っているだけで今後運営側、もしくは制作会社に発見されれば削除される運命にあります。
もし、YouTube動画が半年で3回削除されるとYouTubeアカウントごと削除されることになります。
これに関しては「 3回 」という文面はガイドラインにも存在しますが、1回の削除でチャンネルが削除されたケースもあるので注意が必要です。
また、Googleアドセンスの権利もはく奪されることにもつながりかねません。最悪、これらの警告を無視し続けていた場合、刑法に基づいて逮捕される可能性もあります。
もし過去にテレビ番組などをアップロードしている場合は即座に削除することをおすすめします。「 知らなかった 」では済まされない事態になってしまうその前に対処をきちんとしておきましょう。
有名楽曲使用の場合
他のコンテンツの動画使用は厳しい規制の下にあることがわかりました。
では楽曲の方はどうなのでしょうか。
YouTube動画には、学校イベントや結婚式が撮られたものもありますが、その中に入り込んだ有名楽曲も罰則の対象となるのでしょうか。
実は楽曲の場合は一概にすべての楽曲を含むコンテンツを著作権侵害とはしていません。
これには、楽曲を包括する「 許諾契約 」が深く関係しています。
簡単に言えば「 わざわざ許可をとらなくても楽曲を使用してもいいですよ 」というルールです。
この許諾契約をYouTube社と結んでいる管理団体はJASRACとNexToneになります。つまり、この2団体が管理している楽曲に関しては許可なく使えるということになるのです。
ただし、こちらのルールは動画の収益化に関しては少し複雑になっています。
というのも、管理団体が許可しているのはあくまでも使用の権限であって、著作権の侵害にならないというお墨付きだけの問題です。
楽曲を使用して収益化を図る場合、複雑な問題ですが、「 その楽曲が流れているあいだの広告収入は配信者ではなく楽曲の管理団体にある 」ということを頭に入れておきましょう。
つまり、ある楽曲を使って動画を作成し広告を貼り付けても、その楽曲が流れているあいだの収入は配信者に入ってこないのです。
ここで疑問になるのは「 歌ってみた 」や「 演奏してみた 」という動画です。
結論から言えば、収益化目的にするとややこしい問題に巻き込まれる可能性がある一方、ただ公開だけを目的とする場合は著作権の侵害に当たりません。
収益化目的でアップロードすると、管理団体への配分と制作者サイドの取り分、さらに元の楽曲を作った作詞家・作曲家との権利問題など挙げだせばきりがないほどの権利をクリアしなければならなくなります。
すべて解決できるのであればいいですが、そんなに容易な話ではありません。
純粋な作品公開や娯楽としての方向性を楽しむツールとしてのアップロードであれば、YouTube動画の削除対象にもならず、著作権の問題にもかかわる必要がなくなります。
楽曲メインのチャンネルとするのであれば、これらの利権を詳しく学んでから運営することをおすすめします。
関連記事:YouTubeでの音楽使用と著作権|音楽で収益化をする方法も
第三者による削除はできるのか
YouTube動画の削除は、不適切だと判断した第三者によって削除の申し立てができます。
使用されたコンテンツの権利問題や著作権、情報の正確性や教育的観点など、視聴者によってその基準はさまざまですが、運営本部に申告することができるようになっているのです。
かつての運営本部が人力で行っていた不適切動画のチェック、削除だけでは不完全なための処置ですが、これにより多くのYouTube動画が削除されたこともまた事実なのです。
視聴者はただ動画を楽しむだけではなく、チェッカーとしての機能を持っています。
今後発展していくYouTubeというサイトを育てているのは運営だけではなく配信者、視聴者の三者で作っていることを忘れてはいけません。
当たり前の話ですが、ライバルを蹴落とすためにこの操作をしてはいけません。
申し立てをしたからと言って100%削除できるわけではなく、申立を受けた本部が本当に削除対象かどうかを判断した後に配信者に通告するシステムになっています。
未だかつてこの方法で、申し立てた側が規制されたという話はありませんが、あくまでも一緒にサイトを育てているという感覚を忘れてはいけません。
まとめ
YouTube動画が削除されるには、その内容が誰が見ても健全で悪影響を与えないか、著作権を侵害していないかなどのガイドラインに沿って行われることがわかりました。
もちろん動画作成の段階で気にかけておく必要はありますが、チェッカーも視聴者も人間であるため、些細なことが動画削除につながってしまう可能性もあります。
しかしこれはテレビ番組でも同じことが言えます。
YouTube動画に限った話ではないことを念頭に置き、動画作成する側は日々その動画がガイドラインに抵触しないかを考えていく必要があるのです。
少々手間に感じる人もいるでしょうが、それをクリアしてこそYouTubeの成長につながっていくのです。
そしてYouTubeが成長すれば自らの動画を見てもらう可能性が広がります。
規制があることをマイナスに捉えずに、将来の土壌作りとして一緒になって作っていく必要があるのです。