デジタル化推進のために立ち上げられた「 中小企業デジタル化応援隊 」事業。サービスを受ける企業側にとっても、サービスを提供するIT専門家側にとっても、たくさんのメリットがあると好評です。
本記事では「 中小企業デジタル化応援隊 」の概要や登録方法、さらには評判などをご紹介していきます。
「 中小企業デジタル化応援隊 」とはどんな事業?
中小企業庁と中小企業基盤整備機構が推し進める「 中小企業デジタル化応援隊 」というマッチング制度。
デジタル化に悩む企業を後押しする内容となっています。まずはどんな事業なのか、仕組みや要件を見ていきましょう。
IT専門家によるデジタル化・IT活用のサポート
「 中小企業デジタル化応援隊 」に登録すると、IT専門家からデジタル化やIT活用のためのサポートを得られます。
「 中小企業デジタル化応援隊 」はいわば、専門家と企業をマッチングさせるプラットフォームのような役割。お互いの需要を掛け合わせることで、Win-Winな関係を叶えてくれるのです。
また、事務局などが金銭面もサポートしていることから、公益性の高い事業といえます。
中小企業等・小規模事業者が対象
サーポート対象となるのは、中小企業や小規模事業者。中小企業というネーミングではありますが、業種や事業規模次第で一部の個人事業主も登録できます。
それでは、具体的な「 中小企業デジタル化応援隊 」の要件を見ていきましょう。
中小企業( 個人事業主を含む )の範囲
中小企業( 個人事業主を含む )で対象となる業種は以下のとおりです。
- 製造業、建設業、運輸業
- 卸売業
- サービス業( ソフトウェア業又は情報処理サービス業、旅館業を除く )
- 小売業
- ゴム製品製造業( 自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工場用ベルト製造業を除く )
- ソフトウェア業又は情報処理サービス業
- 旅館業
- その他の業種( 上記以外 )
- 医療法人、社会福祉法人
- 学校法人
- 商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所
- 中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体
- 特別の法律によって設立された組合又はその連合会
- 財団法人( 一般・公益 )、社団法人( 一般・公益 )
- 特定非営利活動法人 上記①~⑧の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者
上記のそれぞれの項目で、資本金の額または出資の総額や、常時使用する従業員の人数が定められています。
小規模事業者( 個人事業主を含む )の範囲
小規模事業者( 個人事業主を含む )で対象になる業種は以下のとおりです。
- 商業・サービス業( 宿泊業・娯楽業除く )
- サービス業のうち宿泊業・娯楽業
- 製造業その他
上記のそれぞれの項目で、常時使用する従業員の人数が定められています
事業実施事務局はアデコ
「 中小企業デジタル化応援隊 」は中小企業基盤整備機構の施策。その運営会社・事業実施事務局はアデコ株式会社です。
IT・エンジニアを中心に有名な人材派遣の大手会社なので、社名を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
謝金額は事務局から大幅に補助される
IT専門家に支払う謝金は、事務局から大幅に補助されます。例えば謝金4,000円( 税込 )/時の場合は以下の負担になります。
- 事務局の負担:3,500円/時( 税込 )
- 中小企業等の負担:500円/時( 税込 )
報酬は基本的に4,000円( 税込 )/時が最低ライン。中小企業は最低500円/時( 税込 )を支払うこととなっています。また、報酬金額は契約によって変動するため、上記はあくまで一例です。
フリーランス・副業人材・シニア・主婦・学生も働ける
IT専門家として登録できる人材の種類は、「 フリーランス・副業・兼業 」や「 認定情報処理支援機関( SMEサポーター ) から認定された企業に所属している人 」となっており、それぞれ登録フォームが変わります。
なお、副業・兼業の場合は就労先から許可を得る必要があるので注意しましょう。その他には以下の条件項目などもあります。
- ⽇本国内に拠点を置いて納税地が⽇本
- 20歳以上の成人
- 法令遵守上の問題を抱えていない
- ⽇本語で円滑に⽀援が⾏える
いずれの要件も「 基本的な業務遂行をできるかどうか 」が焦点となっている印象。詳細は利用規約の確認をしましょう。
年齢・経歴・資格などによる縛りはなく、ITに関する知識さえあれば登録可能。そのため、フリーランス・副業人材・シニア・主婦・学生まで、幅広くIT知識を活かせると評判です。
業務内容
具体的な業務内容としては、以下のように多岐に渡ります。
- テレワーク・Web会議の実現
- ホームページ作成
- キャッシュレス決済の導入
- セキュリティ強化
- SEO対策による集客
- SNSを使ったデジタルマーケティング
こうしたデジタル化・ITの分野に関わる、準委任契約に基づいたコンサルティング業務がメイン。
登録時に経歴・得意分野や「 可能なこと 」「 できないこと 」を記載するため、それに基づいて企業・個人事業主は依頼相手を選定します。
事業に登録している企業・個人事業主の多くは社内に知見のある人材が少なく、外部からのサポートを求めています。相談に対して分析・検討・アドバイスなどができれば業務レベルとして十分です。
支援計画とは?
オンラインシステム上で企業側の相談案件を見つけたら、IT専門家から支援計画を作成・提出します。企業側はこの支援計画を見て、実際に契約するかどうか検討するのです。
相手はIT初心者が多いため、具体的に分かりやすくステップや目的を示しましょう。
また、支援計画を作成する前段階として、詳細をヒアリングする機能もあります。
利用するメリット
「 中小企業デジタル化応援隊 」には数多くのメリットがあります。まずはIT専門家側のメリットから見ていきましょう。
- 特別な資格がなくても高い時給の仕事を得られる
- 営業コスト・労力を削減できる
- 専門スキルを副業・兼業として活かせる
- 実績を積むことができる
「 中小企業デジタル化応援隊 」は時給4,000円以上の高単価な仕事を、特別な資格なしで獲得できます。
フリーランスで活動すると営業活動がつきものですが、「 中小企業デジタル化応援隊 」に登録すればマッチングまでの手間が削減できます。
もし専門スキルを持っているのなら、空き時間に小規模から働いてみることも可能。兼業・副業が前提のプラットフォームなので、自分のペースに合わせて仕事を得て、実績を積むことができます。
続いて企業側のメリットを見ていきましょう。
- リーズナブルに支援を受けられる
- 幅広いジャンルのサポートが揃っている
中小企業や小規模事業者にとって、十分なコンサルティングを受けるには大きな負担が伴います。
「 中小企業デジタル化応援隊 」を利用すれば、事務局が多くの謝金を補助してくれるため、リーズナブルに支援を受けられるでしょう。
また、「 中小企業デジタル化応援隊 」には実に様々な人材が揃っているため、幅広いジャンルのサポートを得られます。
中小企業デジタル化応援隊の相談案件
「 中小企業デジタル化応援隊 」の概要が分かってきたところで、実際にどんな相談案件があるのか見てみましょう。こちらは実際の事例をピックアップしたものです。
相談件名:スマホによる動画撮影・編集・ 掲載とウェブ上での表示方法
業種:その他の事業サービス業
案件概要:現在ウェブサイトを運営しているが、外部発注せずに、団体内でもコンテンツを制作できるようにしたい。特にスマートフォンでムービーを撮影し、アプリで編集、ユーチューブなどにアップロードをし て、運営しているウェブサイト上で表示できるようになるまでの方法を助言いただきたい。
主な案件領域:ホームページ構築
希望単価( 時間あたり ):4,000円
動画撮影・編集に加え、YouTubeやWebメディアへのアップロードを、自社でできるようにするための依頼。
日頃から動画編集や情報発信をしている立場であれば、基本的な手順やコツを伝えることができますね。企業からしてみても、社内の人材で調べるより、経験者からのアドバイスを得た方が効率的です。
IT専門家が中小企業デジタル化応援隊に登録する方法
ここからは、「 中小企業デジタル化応援隊 」に登録する方法を、IT専門家、中小企業・小規模事業者の順にご紹介していきます。
【第Ⅱ期】2021年度( 令和3年度 )の各種期限
第Ⅱ期にあたる2021年度( 令和3年度 )の「 中小企業デジタル化応援隊 」は、以下のとおり各種期限が設けられています。
第Ⅰ期で登録済の場合の開始日:2021年4月26日( 月 )10時〜
第Ⅱ期の新規登録受付:2021年9月30日( 木 )
IT専門家と企業の契約締結期限:2021年11月30日( 火 )
支援終了及び支援実施報告の期限:2021年12月17日( 金 )
IT専門家による謝金申請の期限:2021年12月24日( 金 )
一連の流れにそれぞれ期限があるので、スケジュールを組む参考にしましょう。
IT専門家の登録要件
IT専門家の登録要件は以下のとおりです。
個人として本事業への参加を希望するフリーランス・副業・兼業の方で、副業・兼業の場合は所属先から許可をもらっている方。
中小企業等経営強化法に定められた認定情報処理支援機関( SMEサポーター )としての認定を受けた法人に所属する方であること。
この2つの条件のいずれかを満たしていればOK。認定情報処理機関に所属している場合、「 本事業におけるSMEサポーター法人登録申請 」という別途設けられた窓口から申請しましょう。
登録に必要なもの
「 中小企業デジタル化応援隊 」への登録には、以下の書類等が必要になります。
- 身分証明書コピー
- 口座情報コピー
- 登録用顔写真
身分証明書の種類としては、運転免許証・運転経歴証明書・在留カード・特別永住者証明書・旅券( パスポート )が該当。
これら以外にも、官公庁が発行している書類で氏名・住居・生年月日の記載と顔写真が貼付されているものが必要です。
口座情報コピーは銀行名・銀行コード・支店名・支店番号・口座種別・口座番号・名義人が分かる、通帳あるいはキャッシュカード。
登録用顔写真は身分証明書と照合できるよう、帽子などの装飾品のないものが求められます。
登録の手順
登録の手順は以下のとおりです。
- 利用規約への同意
- 事業ガイダンスの理解
- 登録申請情報の記入
- 登録申請時の提出物を添付
- 情報の登録
一連の流れはIT専門家登録申請フォームを通して行います。
「 3.登録申請情報 」で必要になる情報は、氏名・住所・電話番号・メールアドレス・生年月日・職歴・希望時間単価・マッチング希望・法人番号・口座情報など。ここで提出物の添付も行います。
事務局からIT専門家登録完了の通知メールが届いたら、マイページへとログインして情報を登録します。アカウント情報を埋めた後に案件獲得が可能です。
中小企業・小規模事業者が中小企業デジタル化応援隊に登録する方法
続いて、中小企業・小規模事業者などの支援を受ける側の登録方法をご紹介していきます。
【第Ⅱ期】2021年度( 令和3年度 )の各種期限
中小企業・小規模事業者の各種期限は以下のとおりとなっています。
第Ⅰ期で登録済の場合の開始日:2021年4月26日( 月 )10時〜
第Ⅱ期の新規登録受付:2021年9月30日( 木 )
IT専門家と企業の契約締結期限:2021年11月30日( 火 )
いずれもIT専門家と同様のスケジュールです。
中小企業・小規模事業者の登録要件
中小企業は15種類、小規模事業者は3種類の業種が対象となり、それぞれ以下の項目による基準が設けられています。
- 資本金の額又は出資の総額が5千万~3億円以下
- 常時使用する従業員の数が5~900人以下
- 個人事業主の小規模事業者
また、上記の項目をクリアしている場合であっても、以下に当てはまると対象外です。
① 発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業・小規模事業者等
② 発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業・小規模事業者等
③ 大企業の役員又は職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業・小規模事業者等
④ 発行済株式の総数又は出資価格の総額を①~③に該当する中小企業・小規模事業者等が所有している中小企業・小規模事業者等
⑤ ①~③に該当する中小企業・小規模事業者等の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業・小規模事業者等
⑥ 確定している( 申告済みの )直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業・小規模事業者等参照/中小企業等について
事前に登録条件を満たしているか、業種や事業規模などから判断しましょう。
登録に必要なもの
法人格ありの場合は、法人番号と資本金を入力するステップがあります。また、法人格のない中小企業等が登録する際には、以下の書類のコピーが必要です。
- 身分証明書
- 所得税納税証明書
- 所得税確定申告書B
身分証明書は運転免許書( 有効期限内 )、運転経歴証明書、住民票( 申請日時点で発行日から3か月以内 )の3種類が該当します。
登録の手順
登録する際には以下の手順を踏みます。
- 事業ホームページなどから認知・理解
- 登録システムにアクセスして利用規約への同意
- 情報を入力・担当者の顔写真・必要書類を添付
- 事務局から登録完了メールを受信
- マイページへのログインが可能になる
マイページ画面へとログインしたらアカウント情報をチェックした後、相談案件の登録をして支援を募集しましょう。
「 中小企業デジタル化応援隊 」事業の評判
最後に実際に「 中小企業デジタル化応援隊 」事業を利用している人からの評判・口コミをご紹介していきます。
IT専門家として登録した人の口コミ。受注案件の評価の高さから次々と仕事を獲得しており、フリーランスの大きな負担ともいえる営業活動を削減しています。
クラウドソーシングのように手数料を差し引かれる心配がない点も魅力です。
こちらも受注案件が増えたとのツイート。企業側の相談案件が細かに記載されているため、どのようなニーズがあるのか知るきっかけにもなるようです。
MEO・SEO・ツール導入などは、ほとんどの業種に欠かせないITスキルといえます。
こちらの経営者の方は、DXを推し進めるのに「 中小企業デジタル化応援隊 」事業を利用。
補助金を活用していると会社の負担が軽減されるため、ハードルが下がり、行動に移しやすくなるようですね。同業他社との違いを生む上でDXが効果的という意見は的を得ています。
定期的にセミナーを実施
「 中小企業デジタル化応援隊 」事業では、中小企業・小規模事業者へ向けて定期的に無料セミナーを実施しています。
新型コロナウイルスの影響を受け、Zoomなどを使ったオンラインセミナーも開催中。そのため、参加するか迷っている場合は、まず無料セミナーへ参加して理解を深めてみることがおすすめです。
「 中小企業デジタル化応援隊 」でWin-WinなDXを
「 中小企業デジタル化応援隊 」の最大の特徴は、補助金を用いてリーズナブルに利用できる点。
支援する側のIT専門家からしても、高い時給で働けるメリットがあり、Win-Winな契約でDXを推し進められるのです。
デジタル化やIT技術の導入を検討している企業・個人事業主にとって、「 中小企業デジタル化応援隊 」はハードルを下げるきっかけになることでしょう。
IT技術を持っているフリーランスなどにとっても、営業負担を軽減するチャンスがたくさんあります。
「 中小企業デジタル化応援隊 」には毎期ごとに期限があるため、ぜひスケジュールを確認しつつ、気軽に登録してみましょう。